Contents
現在、日本国内で『CB無線』や『市民ラジオ』と呼ばれる無線は、従事者免許(資格)および無線局免許が不要かつ個人の趣味やレジャー、さらに企業の業務連絡に使用でき、26-27MHzの周波数を使い、空中線電力が0.5W以下の『免許を要しない無線局』として定められたうちの『市民ラジオの無線局』を指します。
総務省公式サイト『免許を要しない無線局の分類と主な用途等』(PDFファイル)https://www.soumu.go.jp/main_content/000458674.pdf
上記の総務省公式サイトのページには免許を要しない無線局の概要一覧があり、“電波法4条のただし書”として『免許を要しない無線局』のうち、電波法4条第2号に該当する無線局として『市民ラジオの無線局』が明記されています。
また、同省公式サイトによる、さらに分かりやすい説明として『電波法令に定める市民ラジオの無線局の要件』が、以下のページに掲載されています。
電波法令に定める市民ラジオの無線局の要件は、電波法第4条第2号及び電波法施行規則第6条第3項において、
- A3E 26.968MHz、26.976MHz、27.04MHz、27.08MHz、27.088MHz、27.112MHz、27.12MHz又は27.144MHz の周波数を使用する
- 空中線電力が0.5W以下である
- 適合表示無線設備である
ことが定められています。
出典 総務省公式サイト『不法無線局の特徴と被害例』 https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/chara/
このことから、現在我が国で『CB無線』や『市民ラジオ』と呼ばれる無線は上記に該当する『免許を要しない無線局』のうち『市民ラジオの無線局』に該当するというわけです。
もともとCB無線はアメリカ発祥で『Citizens Radio Service』、すなわち市民ラジオサービスと呼ばれるものです。日本国内ではそれまで『市民ラジオの制度』と正式に呼ばれたこの制度は資格不要ですが、開局申請をして局免の交付を受ける必要がありました。
しかし、1983年の法改正により、上記の『免許を要しない無線局(または免許不要局)』に該当することとなりました。すなわち、現在では『免許を要しない無線局(無線機)』のうち『市民ラジオの無線局』を利用するにあたって、総合通信局への開局申請は不要で、何らの手続きも要りません。
ここまでのおさらいとして
- CB無線はアメリカが発祥
- かつては日本国内でも『市民ラジオの制度』として免許された(資格は不要だが開局申請が必要だった)
- 1983年『免許を要しない無線局』に改正され、そのうちの『市民ラジオの無線局』となり、開局申請(=局免交付)が不要となり現在に至る
このようにご理解していただければ幸いです。
以下、当サイトでは『CB無線』ならびに『市民ラジオ』という名称で説明させていただきますが、両者は同じものとご理解の上でお読みいただければ幸いでございます。
かつて業務連絡でもCB無線は一般的だった
当時、SONYが販売するCB無線の広告ではCB無線ユーザーを『CBer』と呼称していました。
総務省の昭和56年版『通信白書』に拠れば、当時の『CBer』は実に29万5269局。主に趣味・レジャーの利用者が27%、登山・ハイキングでの利用が23%等、もっぱら個人的な連絡用に利用されていたそうです。
しかし、昨年度末より約1万6000局減少し、昭和52年度以降、毎年減少を続けたそうです。その後、昭和57年に業務と遊びのどちらにも使える『パーソナル無線』が登場。
CB無線はパーソナル無線へと次第に代替されていき、現在ではパーソナル無線も廃止され『遊びにも業務にも使える無線』の代替は『特定小電力無線』や『デジタル簡易無線(登録局)』が、その役目を担っています。
なお、先述したSONYのCB機の広告では工事現場、工場、農場、駐車場、交通整理、森林パトロールなどの業務で自社製のCB無線機が大活躍していると謳っており、当然、法的にアマチュア無線は仕事で使えず、また特定小電力無線など無い当時は農場など広大な敷地で業務を行う事業者の業務連絡用無線としてニーズを満たしたのが、やはりCB無線だったはずです。CB無線も日々の業務における連絡手段として十分に活用されていたと言えるでしょう。
CB無線の遊び方
さて、前述の通り最大送信電力が0.5w(500mw)と極小かつ、外部アンテナの使用も法的に許されていないこのCB無線。どこまで電波が飛ぶのか、不安な皆様の顔が浮かびます。
しかし、地表と電離層を繰り返し反射しながら遠くへ伝搬するHF帯の周波数特性、さらにA3E(AM変調)を利用しているので心配はご無用。
HF帯の26-27MHzでAM変調を使うCB無線の特徴とは
CB無線の電波形式は一般的な業務無線、またはアマチュア無線の144MHzや433MHz帯域で一般的なFM変調と違い、航空無線と同じく、搬送波の振幅の強弱によるAM(Amplitude Modulation) 変調のみ許されています。
また、許可された帯域はHF帯の26-27MHzの中の26.968MHz、26.976MHz、27.040MHz、27.080MHz、27.088MHz、27.112MHz、27.120MHz、27.144MHz以上の8つの周波数(チャンネル)です。
なお、念のために書きますと、CB無線機で使えるのはこれら26から27MHzのみで、アマチュア無線で使えるのは28MHz帯ですので両者で交信はできません。
HFの伝搬特性を利用して遠距離交信を楽しめるのが根強い人気の理由
最大0.5Wの微弱な送信出力しか認められないこのCB無線でも、開けた海上であれば、50キロ~100キロほどの遠距離間での交信はそう難しくありませんが、市街地での交信距離は短いものです。
しかし、5月から9月の春から秋にかけてのシーズンに活発となる電離層状態の異常・Eスポや、電波を大気中の疑似的な導管に通すラジオダクトを利用すれば、話は別。
通常、アマチュア無線でも利用されているこのHF帯(AMやSSBモード)は電離層伝搬や上述のEスポなどさまざまな伝播条件により、通常よりはるかに長距離での通信が可能になる特性があるのです。
ただし、刻一刻とコンディションが変化するため、その通信状況は断続的。
さらにFMに比べて聞き取りにくいAMが標準のCB無線では、慣れないと相手のコールサインを聴きとるのも一苦労です。刻一刻と変わるコンディション下において、短時間で相手の信号を聞き取る力をつける技術の向上には多くの運用回数が必要です。
とくに夏場に発生するEスポを狙えば、とたんに交信距離は1000キロ越えもざらで、北海道と沖縄ほどの長距離でも交信できてしまうのです。
一般的な業務無線の交信では、このような異常伝搬が発生すると”正常”な通信ができませんから非常に厄介です。例えば80年代、VHF帯アナログ警察無線では、ある警察本部の無線交信に同じ周波数を使用する別の県警の無線交信が混信し、正常な交信が妨げられました。
しかし、逆にHF帯アマチュア無線や、フリーライセンスホビーであるCB無線ではこのような”異常伝搬”による遠距離交信こそが1番面白く、実は免許資格不要のCB無線の魅力はそこにあると言っても過言ではありません。
したがって、CB無線の根強い人気の理由は、出力が小さくて外部アンテナ不要の(※使うこと自体が法的に認められていません)ハンディ無線機ながらも、異常伝搬次第で超遠距離交信(DX)が楽しめるからなのです。
CB無線で遠距離交信する秘訣は?
さて、季節やコンディションによって、送信出力の微小なCB無線でも長距離交信ができるのが分かりましたが、それ以外にも成功させるために何か秘訣があるのでしょうか。
もちろんあります。海岸の近くや、河川、水田など水辺の近くで交信をすることです。女にいい格好見せようとバナナボートで無人島へ出向して帰れなくなって海保や漁船に泣きながら救助されてるそこのリア充のキミ!これから海のナウいレジャーはCB無線で決まりだぜ!
とはいえ、相手がいなければ交信は成立しません。でも大丈夫。CB無線の移動運用イベントが行われており、事前に告知がされます。コンディションの良いシーズンでは8つしかないチャンネルが全て埋まってしまうほどです。
ただ、比較的のんびり、ゆったりとラグチューをするアマチュア無線とはやや違い、気象条件によって繋がるチャンスが少ないので、手短に運用場所とメリット交換のみの交信が多くなりますので、無線機に向かってまくしたてるような早口での交信は、少しせわしないかもしれません。
CB無線のコールサイン
アマチュア無線局を例とした場合、個別の無線局を識別するために割り当てられたコールサイン(呼出符号)は総合通信局へ開局申請時に交付された無線局免許状に記されていますから、コールサインとは本来、局免に付随するものと言えます。
では、開局申請の必要ないフリーライセンスラジオのCB無線で各局が名乗っているコールサインはいったい誰が交付してくれたものでしょうか?
実は交付されたものではなく、各自が自由に好きなコールサインを名乗っています。
主に使われているのは、やはりかつての『市民ラジオの制度』時代に交付された『地域名+アルファベット二文字+数字2または3ケタ』に因んだものです。
CB無線はアメリカから
もともと、CB無線はアメリカで始まった無線で、長距離のトラッカーが連絡を取ったり、非常時の通信手段としており、アメリカでは今も愛好家が多くいます。
犯罪組織に覆面パトカーの警察無線の指令本部に不正アクセスされていた『ダイ・ハード4.0』では、ハイテクを皮肉ってか「俺はセカイノオワリが来ても、CB無線で最後まで誰かと話していたい」というようなセリフが出てきたほどです(ただし、演出で周波数は66.6MHzだった)。
また、CB無線で女性を偽り、トラック運転手に仕返しされる恐怖を描いた映画が『ロードキラー』です。
現在もCB無線機は製造販売されているの?
かつて日本国内のメーカーでは日本電機(NEC)、ナショナル、SONY、ケンウッドなど名だたる大手家電メーカーがCB機を製造販売していましたが、SONYでは2006年に「ICB-87R」の製造を終了し、各社撤退。
そのため、長らく国内合法仕様のCB無線機を製造販売する国内メーカーはなく、それらのメーカーの当時のビンテージな中古機をオークションなどで買うのが一般的でした。
やはりコンディションの良い個体では数万円の値がつくこともあり、人気の高さが伺えます。
待望の新製品が続々登場!サイエンテックスのCB無線機
ところが近年、なんと新製品のCB無線機が続々登場しました。静岡の計測機器メーカー・株式会社サイエンテックスは2016年に受注生産の卓上型CB無線機『SR-01』、さらにハンディ型の『JCBT-17A』を発売。ただし、これらは受注生産品で、現在は販売されていません。
しかし、同社のエンジニアが独立して設立されたメーカー・ポラリスプレシジョンからは「Blackbird」、また兵庫の西無線研究所からはハンディ型「NTS111」が発売されています。NTS111はハンディサイズのCB機としては超小型。
合法CB無線と違法CB無線の違いとは?
残念ながら単に『CB無線』と言っても、日本国内では違法CB無線の問題があります。
国内メーカーから過去から現在において、日本国内の電波法に準拠する仕様で販売された国内仕様CB無線機の使用はまったくの”合法CB無線”であり、何ら問題がありません。
しかし、社会問題とも言える大きなトラブルをもCB無線は引き起こしました。
ただし、それは合法CB無線機自体がもたらしたのではなく、高出力に不正改造されたCB無線機や国外向けのCB無線機、そして一部の利用者が原因だったのです。
CB無線が社会問題になった理由
先述したとおり、CB無線の制度はアメリカが発祥です。
当時、日本のメーカーはアメリカ向けに国外仕様CB無線機を製造販売していました。
その国外向けのCB機が下記事情により、日本国内にアメリカ仕様の高出力、多チャンネル仕様のままで逆輸入されたことから、不法無線局、つまりこれが”違法CB無線”として大きな問題となったのです。
当初、CB無線機は、アメリカ輸出用に製造されていました。しかし、昭和52年にアメリカの規格が変更されたため、大量の在庫を抱えた一部のメーカーが逆輸入し、国内市場に流通させました。当時の日本では、合法CB無線機の使用は認められていましたが、ハンディタイプであり、車載においての利便性が悪かったこと等から、合法CB無線機に比べ、大きな電力、多チャンネルの不法CB無線機が大量に販売されることとなり、現在に至っています。
出典 総務省東北総合通信局
以上のように総務省は言及しています。これが日本国内において、いわゆる『合法CB無線』と『違法CB無線』という”二つのCB無線”が存在する理由です。
現在もアメリカ向けのCB機を日本国内で使うと違法になりますので注意が必要です。ただし、日本国内の法令に合致するように改修し、技適証明を取得すれば使用できます。
現在、違法CB無線と合法CB無線の違いは以下のようなものです。
合法局 | 不法局 | |
---|---|---|
周波数 | 27MHz帯8波(8ch)の発射が可能 | 27MHz帯で9波(9ch)以上の発射が可能 |
送信出力 | 0.5W(500mW)以下 | 無線機本体で5W程度 電力増幅器を使用したものは、1000W以上 |
その他 | ハンディータイプのみ。 技術基準適合証明マーク(認証マーク)がある。 | 車載又は固定型。 技術基準適合証明マーク(認証マーク)がない。 変調を聞くためのイヤホンを付けていることがある。 |
出典 総務省東北総合通信局
また、無線機自体の合法、非合法含めてCB無線では以下のような諸々の問題が発生しました。
チャンネルの占有行為
まず、合法的なCB無線で発生したのが一部の利用者側のマナー違反たる”チャンネルの占有行為”です。CB無線は昭和50年代に学生を中心に爆発的な人気となりましたが、人気が過熱して利用者が急増。少ない8つのチャンネル数を巡って、利用者の間で奪い合いと占有行為がたびたび発生したのです。
地域によっては、マナーの悪いCB無線クラブが特定のチャンネルを占有していました。
一見、誰も使っていないチャンネルでも常に留守番役が聴取しており、自分らのグループに属さない人が使おうものなら、脅すなどして実質的にチャンネルを占有したのです。
さらにはそのチャンネル占有に利権を見出したいわゆる反社会勢力が登場。そのような団体を後ろ盾にしたクラブが『会費』名目で上納金を毎月納め、クラブ員メンバーは自家用車や営業車にそれとわかるステッカーを貼って誇示するなどエスカレート。反社会勢力は勢いを増しました。
このようなCB無線でのチャンネル争いは、のちのパーソナル無線でも受け継がれましたが、そのような側面から、CB無線にはある種独特の専門用語があり、とくにトラッカーが好んでこれらの用語を使用していました。一部はアマチュア無線用語とかぶっていたり、正規のハムが使用していたり、派生している用語もあります。食事を「ポンポコチャージ」、乗用車を「レジャッコ」、入浴を「ニューヨーク」など、用語自体は面白くても、その歴史には良くない過去があり、これがアマチュア無線などで使用すると1部のアマチュア無線家は眉を顰める原因となっています。
※参考文献 梅原敦著『早わかりパーソナル無線』
違法CB無線による大出力送信で電波障害や火災の誘発が発生
そして、この窮屈なチャンネル数の少なさや、占有行為に嫌気がさした一部の人たちは、より多くのチャンネル数を持つアメリカ仕様のCB無線機や改造機を電波法に反して使うようになったことが『新たな問題』を引き起こしました。
それは不法なCB無線機から発せられる高出力の電波、電波法で認められていないアンテナによる深刻な電波障害。
とくに主要道路の付近では、民家のテレビや電源も入れていないラジカセのスピーカーから『サブちゃん探してますよ!』とか『ニューヨーク行ってくらあ』など、トラック野郎の雄叫びが聞こえたりなどして、無念にも南方で戦没した日本軍兵士の幽霊ではないかと騒ぎになり住民を恐怖に陥れました。高出力の無線電波が周囲のスピーカーに影響して音声を生じさせる例としては、アニメ映画『パパママバイバイ』でも米軍機墜落の際に発したメーデーの無線が、墜落現場付近の小学校の運動会のスピーカーに混信する様子が描かれています。またすごいの出してきたなあ・・。
さらに最も危険なのは、高出力の電波がストーブの電子回路へ影響を与え、火災の原因となることです。
不法CB無線機から発射される電波は、日本国内で使用するテレビやラジオの受信や船舶無線に妨害を与えたり、高出力の電波により、ストーブの電子回路を誤動作させ、火災を引き起こした事例も発生しています。
出典 総務省東北総合通信局
以上のテーブル内に総務省では言及しています。
なお、違法CB無線機も合法CB無線機も使うチャンネルは非常に近く、また違法CB無線機は大出力であることから、合法CB無線ユーザーの交信にかぶってる来ることが間々あり、合法ユーザーからは嫌われています。
CB無線のまとめ
確実にストレスなく繋がるVHF帯域のアマチュア無線、それに業務利用ならデジ簡がベストな選択ですが、HF無線による遠距離交信の面白さを免許・資格不要で気軽に体験できるライセンスフリー無線は間違いなく、このCB無線だけと言えます。
アマチュア無線のHF運用はアンテナが重要ですが、むしろ外部アンテナの利用が法的に禁止されているCB無線だからこそ、ドライブや旅行先などで気兼ねなく手軽にHFが楽しめると言えるでしょう。
CB無線はダクト現象といった電波の異常伝搬やEスポなどの特定の気象現象による遠距離交信が醍醐味と言えますが、そのようなコンディションでなくとも、標高の高い山で運用を行えば400キロは飛びます。
現在では、昭和50年代の最盛期と比べるまでもありませんが、気軽に楽しめるフリーライセンス無線として、著名なメンターに触発された若い世代の方たちが興味を持って始める例が増えており、静かなブームとなっています。
https://www.excite.co.jp/news/article/Radiolife_30729/
なお、Amazon Kindle Unlimitedに入会すると、月額980円でライセンスフリー無線完全ガイド Vol.2 三才ムック vol.962の電子版など、三才ムックが出版する無線関連書籍の多くをはじめとして、100万冊の電子書籍が無料で読み放題です。
Amazon Kindle Unlimitedに入会すると、月額980円で三才ムックが出版している多くの無線関連書籍をはじめとして、キンドル本として販売されている本(小説、コミック、雑誌、写真集など)のうち、100万冊の電子書籍がでどれも無料で読み放題です。Kindle端末がなくても、Kindleの電子書籍はパソコン(ブラウザやアプリ)やスマートフォン(アプリ)で読むことができます。この機会にぜひ入会しませんか。