【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、無線受信や運用に関して総務省総合通信局の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、各種記事はそれらの調査結果に基づいて構成しています。

【生産終了】ICOM IC-R30、ここが凄かった!

悲しいお知らせです。

私たちの受信趣味を長年支えてきた名機、ICOM(アイコム)の人気広帯域受信機「IC-R30」が、突然生産終了となりました。


この知らせに、SNSでも多くの驚きと落胆の声が広がっており、衝撃の大きさがうかがえます。

生産終了の理由は不詳ですが、ウクライナ情勢に伴う半導体の供給難や、近年の製造コストの上昇などが影響している可能性を指摘する声も。

IC-R30はハンディ型でありながら、受信範囲は0.1MHzから3304.999MHzまでという広帯域を誇り、SSBを含むHF帯にも対応した高性能モデルでした。

その多機能さから、同社のフラッグシップモデルとして高く評価されていた機種です。

そんな人気機種が、発売からわずか4年で生産終了となり、しかも先に発売されていた大人気定番レシーバーである「IC-R6」よりも先に姿を消すというのは、多くの受信ファンにとって予想外だったかもしれませんね。

今回の決定により、アイコムの採算性や将来性を心配する声も一部で上がっています。

高性能かつ貴重な受信機であっただけに、その喪失感は非常に大きいでしょう。

さらに悲劇的なのは『IC-R30の後継機はない』とのこと。

仕方のないこととはいえ、こうなったら思い出話でもしてみましょうか。

およそ8万円という価格帯のハンディ受信機であるIC-R30ですが、もちろん筆者自身も愛用しています。

特徴はHF帯に対応し、航空機の洋上管制で使用されるUSBや、アマチュア無線7MHz帯のLSBなど、多様な電波形式を手軽に受信できるのも魅力でした。

従来の携帯型受信機ではカバー範囲が限られることが多く、HF帯の利用には今でこそ、SSB対応のBCLラジオなど格安な機材もありますが、据え置き型の機材が必要とされる場合が少なくありませんでした。

そのため、持ち運び可能なサイズでHF帯を扱える点は実用性が高いですね。

高額ですが、機能面を重視するユーザーにとって十分な価値を備えており、ハンディ機の選択肢を広げる存在として位置付けられます。

IC-R30のここがすごい

短波、デジタル通信まで幅広くカバーし、Bluetoothによってスマートフォンとの連携も可能というまさに黒船的なこのIC-R30という受信機。

特に優秀な機能をピックアップして見ていきましょう。

Bluetooth機能の優秀さ

IC-R30はBluetooth機能を搭載しており、受信機をワイヤレスで使用したい場合に便利です。

以前はBluetooth送信機を別途用意する必要がありましたが、本機の搭載によりその手間が省けます。

とくに航空祭のように長時間使用する場面では、本体とイヤホンの電池持ちが気になりますが、ケーブルに煩わされず受信できるのは大きな利点。

また、IC-R30を設置する位置を離しても受信できるため、空港周辺での撮影時にモービルホイップに接続したIC-R30を車内に置き、離れた場所から無線を聴取できるのは便利。

ただし、ペアリングが切れると、本体スピーカーから受信音が出るので、あらかじめ設定でスピーカーから音を鳴らないように設定しておくのがお勧めです。

人前で変な無線を聞いていたりする場合注意が必要ですね。例えば航空祭でIC-R30をリュックサックに入れてGCI聞いてる時とかですね(笑)

これらを守るだけで、ワイヤレス受信の可能性がさらに広がるので、本当に便利な受信機ですよ。

録音機能の優秀さ

IC-R30には録音機能が付いています。しかも、ものすごく卓越したエアバンダー向けの2波同時録音機能なのです。

同社のアマチュア無線機であるID-51もVHF帯に限られますが、2波同時受信が可能です。

しかし、録音可能の周波数は操作中のメインバンドのみ。

設定によっては聞きたい交信が録音されていない場合もあり、この意味ではなかなかかゆいところに手が届くというまでではありませんでしたね。

2波同時受信

IC-R30には、AMモードでの同時受信機能が備わっています。特徴的なのは、VHFとUHFの組み合わせに限らず、VHF同士やUHF同士でも並行して受信できる点です。

選択肢が広く、設定の自由度が高いのは魅力でしょう。

UHFの周波数を2つ同時に聞けること、しかもどっちも感度が高いこと。この2つを満たせる受信機やアマ機って意外と少ないんですよね。

例えば前作のIC-R20では2波同時受信ができましたが、UHFは1部しか聞けませんでしたね。

やっぱり皆さんの使い方としては、航空自衛隊のGCI探しで本機を活用する方が多いんじゃないでしょうか?

Aバンドでは既に判明しているGCIを固定で聞きながら、Bバンドで未判明の周波数をスキャンして探すという使い方もOKです。

UHFが同時に聞けるっていうのはやっぱりいいですよね。

航空自衛隊の戦術用周波数『GCI』とは

スキャン&サーチが多機能すぎる

IC-R30には多様なスキャン機能が搭載されていますが、基本となるのは、全バンドを対象とする「オールスキャン」、AM、FMなど電波モードごとに検索する「モードスキャン」、登録したチャンネル群を指定して行う「グループスキャン」、さらに複数グループを連結走査する「グループリンクスキャン」の4種類です。

これらは従来機にも見られる基本的なモノですが、IC-R30では組み合わせや設定の柔軟性が高められている点が特徴と言えますね。

加えて、IC-R30に搭載されたGPSによって現在地周辺の無線局を自動で抽出して走査する「最寄局スキャン」も搭載されているのが特徴です。

現在位置を中心に半径およそ160キロ圏内の無線局をジャンルを問わず抽出できます。対象となるのは、緯度・経度の位置情報をメモリーチャンネルに登録した無線局で、現在地から近い順に、最大50チャンネルまでまとめてスキャン可能。

半径160キロという広範囲をカバーするため、自宅受信よりも移動中に効果を発揮します。作動にはIC-R30がGPS信号を捕捉し、現在地を把握している必要がありますが、緯度・経度を手動で入力することも可能です。IC-R30に搭載された次世代のスキャン方式で、移動中の受信スタイルに新しい可能性をもたらす機能だと思います。

移動運用や航空祭などの現場で特に有用でしょうね。多機能であるがゆえに使いこなしには慣れが必要ですが、次世代の受信機の方向性を示すものといえます。

基本機能

IC-R30は、受信機としての基本性能も高い水準にあります。

特に評価されるのがハンディ型としては高速なスキャン速度で、従来機のIC-R6が1秒間に約100チャンネルだったのに対し、IC-R30ではAバンドで200チャンネル、Bバンドでも150チャンネルに達します。これにより、GCI探しなど、効率的な探索が可能となっています。

また、デュアル受信機能を備えており、複数のバンドを同時に監視できる点も利便性が高いですね。一方で、発売当時の競合製品と比較すると、対応するデジタル波の種類が限られていたことは弱点といえます。

総合的に見れば、コンパクトな筐体に高速スキャンとデュアル受信を搭載した点で、携帯型受信機の性能を大きく押し上げた機種といえるのではないでしょうか。

HFの航空無線『洋上管制』の受信方法を解説

 

HFをキャッチして異国の空気に思いを馳せたり――ときには正体不明の信号を受信して、「これは何だろう?」と胸を躍らせながら解析したこともありました。

IC-R30は、まさに私の世界を広げてくれた大切な相棒です。

HF帯での諜報戦の実態とは?謎の通信、受信時の注意点などを解説

ただ、せっかくのデジタル機でありながらも、当時のAOR製品などに比べると、対応しているデジタル波の種類が少なかった点が唯一の弱点ではありました。

アナログ・デジタル両対応の受信機としては比較的手ごろとはいえ、約2万円のIC-R6などと比べれば、価格は約4倍。購入を迷っていた方も多かったかもしれません。

しかし、実際に手にした方にとっては一生モノの機種だったと思います。

とはいえ、時代の流れには逆らえません。IC-R30が登場したのは2018年。無線の世界も進化し、最近ではSDR(ソフトウェア無線)の普及が著しくなっています。

さらに2023年には、アルインコから強力なデジタル受信機「DJ-X100」が出てきました。同じく8万円ほどなのに、裏コマンドで秘話解析対応、デジタル無線の種類が豊富です。

とくにマスコミ無線を受信したい人にとっては、秘話の解析ができないIC-R30では役不足でした。かといってAORは12万円だし。

G7広島サミット報道『トランシーバーで仲間と連絡取る女子大生』という設定なのに、映ったものは……。デジタル聴くならDJ-X100です

おそらくICOMも、技術革新の波に対応するために、この名機に一区切りをつける決断をしたのでしょう。

それでも、IC-R30の魅力は決して色あせることはありません。現在でも多くの方が愛用しており、私自身もこれからも大切に使い続けるつもりです。

とはいえ、「もうIC-R30が手に入らないのか」と落胆している方もいらっしゃるでしょう。しかし、まだ希望はあります。

中古市場をチェックしてみてください。人気機種ですので、しばらくは市場に出回るはずです。今のうちに探して、ぜひ手に入れてください。

また、次世代機にも期待したいところです。ICOMが今後どのような機種を送り出してくれるのか、仮に「IC-R40」といった進化モデルが登場すれば、きっとまた大きな話題となるでしょう。

そして、SDRにもぜひ目を向けてみてください。最近のSDRは性能も高く、パソコンやスマートフォンでも手軽に使用できる時代になっています。技術の進歩に合わせて、自分の受信スタイルをアップデートしていくのも一つの楽しみ方です。

それでも、やはりIC-R30は特別な存在でした。これからも大切に使い続ける方が多いでしょうし、私もそのひとりとして、この名機と長く付き合っていくつもりです。

これからも、無線のある暮らしを楽しんでいきましょう。

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