ATIS(Automatic Terminal Information Service)とは、空港ごとに常時流れている自動音声の情報放送です。
ほかの航空無線とは違い、相互交信ではなく、一方的に流れる「対空送信」 に分類されます。いわば、ラジオ放送のような感じです。
普通の航空無線と同じAMモードのVHF帯なので、何の問題もなく受信できます。
航空機の撮影を行うファンにとっては、夜間に風向が変わったり、滑走路が切り替わったりすると、撮影で活用できる“先読み情報”になります。
各項目に飛べます
ATISの特徴

ATISの内容は空港の「今の状況」をパイロットに効率よく伝えるためのものです。
-
送信元の空港名
-
情報名(A~Zのアルファベットで管理)
-
使用中の滑走路
-
天候(風向・風速・雲量・気温・気圧・視程)
-
運用上の注意事項(工事中の誘導路、鳥の出没など)
- デパーチャー(出発用)の周波数
こうした情報が、空港の管制官に代わって英語で録音されて、空港の運営時間中ずっと自動的に繰り返し放送されています。
空港によってATISの更新間隔や運用時間が異なります。チャートや管制資料に記載されている場合も多いので、事前チェックが安全です。
ATISはエアバンド受信の入門にピッタリ!
ATIS(Automatic Terminal Information Service)は全空港に標準装備されているわけではありません。特に地方空港では、交通量や運用規模に応じて設置されていないケースもありますが、少し調べれば意外と聞きやすい空港も見つかります。

航空無線を聞いたことがある人なら、
「こちら羽田情報、時刻〇〇時現在……使用滑走路はRWY 34R、風は北西〇ノット……」
といった淡々とした音声が延々ループしているのを聞いたことがあるかもしれません。
これは一見退屈に思えるかもしれませんが、航空ファンにとっては宝の山。
「今どの滑走路を使っているか」が分かれば、スポッティング(飛行機撮影)の効率も上がりますし、気象情報からその日の運用傾向を読むこともできます。
また、内容は 全部英語 なので、航空無線を勉強しとる人には うってつけの教材 になります。
ただし、上空を飛ぶ航空機からの電波とは違い、ATISは地上局の電波 のため、空港から遠くなると受信が難しくなるでしょう。
どうしてもATISを受信したいなら……
🗻 高い山の山頂 で複数の空港のATISを狙う
✈️ 思い切って空港まで行く
そんなときに おすすめなのが「アイコム IC-R6(受信改造済み)」です。
IC-R6の受信感度の高さは証明済み なので、遠くのATISもキャッチできる確率がグッと上がります。
自衛隊・軍事基地では「METRO(メトロ)」と呼ばれる気象放送も

実は、自衛隊や在日米軍の航空基地にもATISに相当する気象情報の自動放送があります。
ただし呼び名が違っていて、こちらは 「METRO(メトロ)」 と呼ばれているんです。
民間空港のATISが「空港の今」を知らせるのと同じく、METROも航空機の安全運用に欠かせない情報源です。
米軍方式との違い
米軍のMETROは、日本のATISと比べると少し独自のフォーマットを持っています。
それでも基本的な内容―たとえば:
-
使用中の滑走路情報
-
天候データ(風向・風速・気温・気圧)
-
運用上の注意点
こうした点は大きく変わりません。
特に気象に関する部分は共通性が高いでしょう。
関連リンク 【解説】自衛隊の無線周波数と役割(HF・VHF・UHF)
METROで聞ける“軍用っぽい”情報
METROが面白いのは、台風や気圧の大きな変化があるとき。
場合によっては、風速や突風のデータが詳細に放送されることもあります。
これは、戦闘機や大型輸送機の運用に直結するため、より精度の高いデータが必要とされるからでしょう。
受信していると「おっ、民間ATISよりも具体的だな」と感じる瞬間があり、軍用無線局の面目躍如です。
英語の壁
ただし米軍基地のMETROは、当然ながら 英語のネイティブ発音。
慣れていないと最初はスピードに置いていかれ、「単語が聞き取れない!」ことも。
けれど逆に言えば、リスニング教材としては格好の素材。
何度も受信していると、航空用語や気象用語が耳に自然と馴染んできます。
自衛隊・米軍基地のMETRO周波数一覧(参考: Wikipedia日本語版)
ウィキペディアによる情報を基に構成しています。VHFおよびUHFで行う基地もあります。
空港/基地名(ICAO) | 周波数(MHz) | 備考(運用時間など) |
---|---|---|
横田基地(Yokota Air Base) | 128.4 / 281.0 | 在日米空軍基地で最大 |
厚木基地(Atsugi) | 246.8 | 海自・米軍とも近接。METRO運用あり |
キャンプ座間(Camp Zama) | 126.3 | 神奈川県にある在日米軍司令部。METRO名の気象放送あり |
岩国飛行場(Iwakuni AB) | 128.4 / 283.0 | 自衛隊米軍共同。航空祭などでも使われる |
八戸飛行場(海自) | 245.8 | 夜間帯運用あり(例:22:00~13:00 JST) |
嘉手納基地(Kadena AB) | 124.2 / 280.5 | METRO 放送あり |
👉 航空無線受信を趣味にしている人にとって、METROは「もう一段ディープな世界」への入り口。
ATISに慣れてきたら、ぜひ挑戦してみたいジャンルといえるでしょう。
国内各空港ATIS一覧と聞きやすさ解説
一覧にある空港の多くは「H24(24時間)」体制でATISが運用されています。特に成田、羽田、中部国際、大阪国際などは、夜間にも更新が行われています。
区分 | 空港名 | 周波数 (MHz) | 運用時間 | 特徴・ポイント |
---|---|---|---|---|
地方空港 | 新千歳 (RJCC) | 128.60 | H24 | 北海道の拠点。天候変化が大きいので受信学習に◎ |
〃 | 仙台 (RJSS) | 126.45 | H24 | 東北地方の主要ハブ。風情報が安定して取れる |
〃 | 新潟 (RJSN) | 128.45 | H24 | 日本海側で冬季の荒天に強い。勉強向け |
〃 | 広島 (RJOA) | 127.25 | H24 | 山間立地の空港。風や視程データが特徴的 |
〃 | 福岡 (RJFF) | 127.20 | H24 | 九州の玄関口。トラフィック多く実用性高し |
〃 | 大分 (RJFO) | 127.80 | H24 | 地方でも安定したATISあり。初心者におすすめ |
〃 | 鹿児島 (RJFK) | 127.05 | H24 | 離島便も多く運用変化が楽しめる |
国際線対応空港 | 成田国際 (RJAA) | 128.25 | H24 | 日本最大の国際空港。更新頻度が高く勉強になる |
〃 | 羽田 (RJTT) | 128.80 | H24 | 国内外の便数最多。受信機のテストにも最適 |
〃 | 中部国際 (RJGG) | 127.075 | H24 | 海上立地で電波がクリアに飛ぶ |
〃 | 大阪国際 (伊丹 RJOO) | 128.60 | H24 | 市街地近くでアクセスしやすく初心者人気 |
夜間対応空港 | 成田・羽田・中部・伊丹など | 各周波数 | H24 | 夜間運用でもATIS更新あり。深夜の風向チェックに役立つ |
✨ 受信のコツ
-
地方空港から入門 → 国際線空港にステップアップすると効率よく学べる
-
夜間の滑走路運用変更を狙うと ATIS の情報更新がよく分かる
-
空港見学や飛行機撮影の “先読みツール” としても使える
-
受信に慣れると「滑走路運用」「気象変化」が分かり、航空無線の楽しみが倍増
おすすめの空港と周波数(一例)
-
成田空港(RJAA)
-
ATIS:128.25 MHz
-
-
羽田空港(RJTT)
-
ATIS:128.800 MHz
-
-
三沢基地(航空自衛隊)
※民間ではありませんが、米軍基地の一例として-
ATIS:128.4 MHz
-
これらの空港や基地の近くにお住まいの方が、安定して受信しやすいATISの一例です。
また、ATISは航空図やアプローチチャートにも、周波数が記されています。パイロットだけでなく、受信趣味の方にとっても貴重な受信ヒントになります。
考察まとめ

ATISは、空港で常時送信されている自動情報放送。自衛隊・米軍基地にもATISに相当する METRO があります。
パイロットにとっては必須の情報源であり、受信者にとっても「空港の今」を知る“手がかり”で、受信体験にリアリティが増します。
つまりATISは、単なるバックグラウンド放送ではなく、
「航空無線の入り口」かつ「運用状況を知るための基本情報源」 といえるでしょう。
ラジオライフのような専門誌では、新しい受信機が発売されると、ATISの受信感度を聞き比べて、性能を比較することもあります。
このようにATISは24時間送信されているので、受信機のチェックも行える便利な無線局です。
地味ながら奥が深いATIS受信。
「航空管制の仕組み」を理解する第一歩になるはずです。