【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、無線受信や運用に関して総務省総合通信局の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、各種記事はそれらの調査結果に基づいて構成しています。

主に自衛隊・米軍が使う着陸管制『GCA』とは

ミリタリーエアバンドの特徴のひとつとして、民間航空機ではあまり耳にしない管制部署「GCA(Ground Controlled Approach=着陸誘導管制)」があります。GCAとは、レーダーで航空機の位置を監視しつつ、管制官が音声でパイロットに逐一機体の状況を伝えながら着陸を支援する方式のことです。

詳しく見ていきましょう。

GCAの役割

日本の民間空港で国土交通省の管制官が行うGCA(Ground Controlled Approach=地上管制進入)は、現在では那覇空港に限られ、その他の空港では計器着陸装置(ILS)が標準的です。

ILSが計器を使った誘導または自動着陸であるのに対し、GCAは「無線による人間の声」で誘導する着陸方式が特徴です。

このため、エアバンド受信の分野で「GCA」といえば、防衛省や在日米軍の飛行場で行われる「GCA交信の受信」を指す場合が多いのです。

特に悪天候や夜間など視界が制限される状況では、今なお重要な着陸誘導の手段として活用されています。また、那覇空港以外でも、自衛隊や米軍と民間が共用する飛行場では、防衛省や米軍の管制によって民間機がGCA誘導を受けるケースもあります。

GCA管制は、パイロットに現在の降下角度(グライドパス)や進入方向(コース)を指示し、所定の進入経路へ正しく誘導することが目的です。たとえば機体が降下角度より高ければ「Above(上)」、コースより左に逸れていれば「Left(左)」といった具合に、具体的な状態が逐次伝えられます。

場合によっては旋回方向まで細かく指示されることもあります。こうしてコントローラーの言葉を頼りに、パイロットは姿勢を修正しながら最終進入(ファイナルアプローチ)へと機体を乗せていくのです。

このGCAを受信すると、自衛隊機がいまどの高度でどの位置にいるのかが、まるでレーダー画面をのぞいているかのように手に取るように分かるのが興味深いでしょう。

機械に任せた計器進入(ILS)とは違い、あくまで人と人との声によって行われる着陸誘導、それがGCAの存在意義です。

最新の軍用航空無線の領域でありながら、古典的でもある―。それがGCA受信の面白さとも言えます。

自衛隊におけるGCA利用の背景

民間航空機では滑走路ごとに設置されたILS(Instrument Landing System=計器着陸装置)が着陸支援の基本になっています。パイロットは計器に表示されるローカライザー(進入方向)とグライドスロープ(降下角度)の信号を頼りに、ほぼ自動的に正しい進入路に乗れる仕組みです。安定して精密な進入を実現する技術で、民間航空に不可欠といえます。

一方で、自衛隊が重視してきたのは「有事対応力」です。ILSは滑走路に専用の設備を恒常的に設置しなければ機能しないため、整備された基地以外では使えません。対してGCAはレーダーと管制官がいれば運用でき、移動式管制装置による臨時設置も可能です。戦時や災害時など、固定設備が破壊された状況でも即座に代替手段として機能し得るのです。

そして、有事の際、司令部、地対空ミサイルやレーダーサイトなどのある空自の分屯基地、さらにILSのような重要設備は真っ先に敵の攻撃目標となり、破壊されてしまうのです。

さらに軍用機は民間機以上に多様な飛行環境に置かれます。悪天候や夜間に限らず、戦闘下での着陸も想定されます。その際、ILSのように「機体が自ら信号を追従する」方式ではなく、地上から逐一指示を受けて柔軟に進入できるGCAの方が実戦向きだといえるでしょう。コントローラーの裁量によって、進入経路の変更や緊急対応も可能になるのです。

つまり結果として、自衛隊では「平時から有事を見据えてGCA方式での着陸方式を選択した」と考えられます。つまり、GCAは単なる“古い技術”ではなく、軍隊ならではの運用思想が色濃く反映されたシステムなのです。

GCIとの違い

同じく航空自衛隊のUHF帯通信には似た名称の『GCI』があります。

既に解説している通り、GCIは「戦闘周波数」です。GCAが着陸誘導を目的とした“平時の管制”であるのに対し、GCIは迎撃戦闘を想定した“実戦的な管制”なのです。どちらもレーダーで航空機を監視し、地上の管制官が音声で指示を与える点は共通していますが、内容は大きく異なります。

GCAでは「降下角度が高い」「コースより右に寄っている」といった着陸のための微調整が中心ですが、GCIでは「方位〇〇度に敵機あり」「高度を上げろ」「速度を維持せよ」といった戦闘に直結する指示が飛びます。つまり、GCAがパイロットを安全に滑走路へと導く“ナビゲーター”なら、GCIはパイロットを戦闘空域へと導く“オペレーションディレクター”の役割を担っています。

GCAは公開周波数

また一方でGCAは、あくまで「着陸誘導」という運航補助の役割に留まるため、周波数の秘匿性は要求されておらず、誰でも調べればアクセスできるのが大きな特徴です。

航空無線の解説書でも、「私たちの趣味を守るためGCI周波数は公開しないこと!」とマナー啓発が頑なに叫ばれますが、GCAについては掲載されており、軍事無線の世界において、どの通信が“秘匿対象”で、どの通信が“公開可能”なのか、その線引きが、実は運用目的と直結しているわけです。

これらの情報をもとに、航空祭などのイベント時に愛好家が受信できるのも、この“公開性”のおかげです。

自衛隊のGCI周波数を書いたら違法になる?電波法と“公開の限界”を整理する

まとめ

受信者の立場からすれば、GCAは静かな夜に耳を傾けると臨場感あふれる“着陸ドラマ”を体験できる周波数。一方、GCIはまさに戦闘機乗りたちの“戦闘会話”、引いて言えば『政治の世界』『明日のニュース』までをも垣間見ることができる周波数です。

両者を聞き比べることで、同じ「航空自衛隊のUHF無線」でありながらも目的と雰囲気がまったく違うことが分かり、ミリタリーエアバンドの奥深さを実感できます。

※これらの周波数はノーマルのIC-R6では受信できません。必ず以下の受信改造済 フルカバータイプ アイコム IC-R6をご用意ください。

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