プロの無線従事者の資格とは?アマチュア業務とプロの業務はどう違う?

 

「アマチュア無線があるなら、プロ無線もあるの?」

ふと疑問に思うことがあるかもしれません。

アマチュア無線は電波法(第1条第78項)に、金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務として定義されています。

また『一次業務』、『二次業務』という区分けがあり、アマチュア局とそれ以外の業務局のどちらが同じ周波数を優先的に使用できるのか取り決められています。

実は企業や官庁の行う”プロ無線”という定義自体はないものの、アマチュア無線の国家試験を執り行う『公益財団法人 日本無線協会』では、全部で23ある無線従事者国家資格のうち、4級から1級まで4つあるアマチュア無線技士資格を除く19の資格を”プロ”と呼称しています。

プロ無線従事者の資格を詳しくご紹介いたします。

プロの無線従事者資格19個をご紹介

これら19あるプロ無線資格。

頂点である総合無線通信士をはじめ、陸上無線技術士や海空の無線通信士、陸海空の特殊無線技士などさまざま。

陸上無線従事者

陸上特殊無線技士

第一級から第三級ならびに国内電信の4つある『陸上特殊無線技士』は一般的な事業者、警察や消防といった官庁で活躍できます。

実際、警察学校や消防では養成課程講習による取得を義務付けています。

受験資格は不要で一級から三級まで実技試験がなく、多肢選択式による筆記試験で第二級および第三級は小学生でも易々と合格できるレベル。実際に小学生レベルの筆者も二陸特を一発合格しており、お察しと言えます。

二陸特および三陸特はCBT試験が行われており、いつでも気軽にお近くのCBTテストセンターで受験可能。

CBT試験の解説はこちらで行っています。

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国内電信級陸上特殊無線技士のみ、モールス通信の実技試験が行われます。

第一級陸上特殊無線技士、通称「一陸特」が陸海空すべての特殊無線技士の中では最高峰。

一陸特を求めるのは大手通信会社および、その基地局を保守管理する会社など。

これらの業界への転職に有利な無線従事者資格とされ、その分難易度は高く、計算問題の出題頻度が高く、ひねくれた問題も多くなります。

ただし、国家試験より多少楽に取得できる方法もありますので、下の方でこっそり教えます。

陸上無線技術士

第一級陸上特殊無線技士を取得した方が次に目指すとされるのが、第一および第二級陸上無線技術士(陸技)。

高度な知識と技術を要求される放送局や官庁の無線設備の保守管理を行う資格です。

高専や専門学校が就職先の一例にこぞって「警察庁技官」を出していますが、実際、警察庁は陸技の取得者をプロフェッショナル採用と銘打って募集しており、情報通信基盤の構築や保守管理、サイバー犯罪における情報技術解析支援要員に充てています。

海上無線従事者

海上特殊無線技士

第一級から第三級ならびにレーダー級まで4つある『海上特殊無線技士』の資格は主にレジャー船や漁船など内航船における無線通信に必要です。

第二級および第三級は小学生でも易々と合格できるほど難易度が低く、実際に小学生レベルの筆者も二海特を一発合格しています。

船舶の運行が前提のため、レーダーや国際VHFの使い方、遭難通信(メーデー)に関する問題など、人命に直接関わる問題が多数出題されます。

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第一級海上特殊無線技士では筆記のほか実技試験として英語の送話と受話、さらにポートラジオ、海上保安庁などとの英語による無線交信に関する問題が出題され、比較的難易度の高い試験です。

第三級および第二級はCBT試験が行われており、いつでも気軽にお近くのCBTテストセンターで受験可能。

海上無線通信士

第一級から第四級まである海上無線通信士はもっぱら船舶の無線設備の操作を行う資格です。

一海通・二海通・四海通は、第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作が認められています。

また、四海通は科目合格制度あり、一海特の工学試験免除特典あり、一陸特の養成課程選抜試験免除特典あり、海上無線設備登録点検員の任用資格ありと、「踏み台」にされることも多い、実はおいしい資格です。

気になる難易度ですが、「通信士」の名称を冠する通り、上述の一陸特を除く各特殊無線技士よりもやや高め。

最も下位である四海通でも、一海特より遥かに工学の難易度が高くなっています。

つまり、四海通取得者の一海特工学試験免除はこれが理由。

ただし、四海通では英語や電気通信術の実技がないため、一海特と比べて総合的にどちらが難しいか一概には言えません。

航空無線従事者

航空特殊無線技士

航空特殊無線技士(航空特)は主に日本国内で自家用機や一部の航空機事業の操縦士が取得する資格です。

級はなく、学科試験は3アマより簡単です。これは「理論・構造・機能」にまで及ぶアマチュア局と違い、航空特の操作範囲が「無線設備の取扱方法」に過ぎないため。

実際の航空機の操縦に伴って、無線装置の使用が前提となる資格ですから、レーダー、GPS、ATCトランスポンダの使用方法に関する問題が出題されるのが特徴です。

一方、実技試験の通信術として英語の送話と受話があります。

普段からアマチュア無線で(正しい)フォネティックコードを運用しているアマチュア局ならとくに難しい試験ではないと言えます。

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航空無線通信士

航空特の上位資格です。大手航空会社の旅客機など一般的な事業用航空機を操縦するプロのパイロットで必要になります。試験内容には英会話があります。

総合無線従事者

総合無線通信士

海上、航空及び陸上の無線局の無線設備の操作を総合的に行えるのが、第一級、第二級、第三級まである「総合無線通信士」です。無線従事者国家試験で最難関です。

プロ無線の資格取得者には特典も

無線従事者の資格取得者には実は特典があります。

消防設備士(甲種)の受験資格ができる

指定試験機関である財団法人・消防試験研究センターによると「消防設備士乙種は誰でも受験できます」が、甲種になると受験資格が設けられ「国家資格等による受験資格」に設けられた「無線従事者 電波法第41条の規定により無線従事者資格(アマチュア無線技士を除く。)の免許を受けている者」という規定によって受験資格が得られます。

詳細は財団法人・消防試験研究センター https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/annai/qualified01.html

社会保険労務士の受験資格ができる ※一部資格

厚生労働大臣が認める『社会保険労務士の受験資格』には学歴または一部の国家資格取得者、自衛官、皇宮護衛官など国家公務員採用試験合格者などがありますが、無線従事者の国家資格では『一総通』および『一陸技』の取得者が受験資格に該当します。

点検の業務を行える(個人・法人)※一部資格

第一級、第二級及び第三級総合無線通信士、第一級、第二級及び第四級海上無線通信士、航空無線通信士、第一級及び第二級陸上無線技術士、陸上特殊無線技士、第一級アマチュア無線技士の資格を有し、一定の要件を満たす者は、総務大臣の登録をうけ、それぞれに定められた種別の多様な無線局(固定局、放送局、海岸局、航空局、船舶局、衛星局、地球局、アマチュア局ほか多数)の点検の業務を行うことができます。個人事業主も可能です。

出典 日本無線協会公式サイト『有資格者のメリット』https://www.nichimu.or.jp/denpa/merit/index.html

まとめ

いかがでしたか。これら19個のプロ無線従事者は一般に、アマチュア無線家が利益を目的としない、もっぱら個人的な興味に基づく技術的、実験的な交信が基本であるのに対して、利益追求のための商業活動における各種企業の業務無線や、警察無線などに代表される犯罪の予防など治安の維持に関する無線、消防無線などに代表される人命の救助のために活動する非営利の公的機関が使う無線の運用に従事しています。

ですから、非営利目的の技術実験的通信のみと限定されているアマチュア無線に対して、間違いが許されない一般の商用利用や公務で使用される無線という点からも、やはり「プロ無線」と呼んで差支えないでしょう。

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