受信改造済みではないIC-R6を買うと後悔する理由とは?

A3E(AM)の振幅変調である航空無線は免許・資格のいらない広帯域受信機(ワイドバンド・レシーバー)で受信が可能です。なお、広帯域受信機について以下の記事でもより詳しく解説しています。

広帯域受信機で聴ける無線、聴けない無線は?

 

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では、どの受信機がいいのでしょうか。当サイトが推奨しているアナログ広帯域受信機は以下の製品です。

プロも使う広帯域受信機IC-R6!だけど、落とし穴がある

当サイトが推奨する『多くの航空無線ファンに支持される航空無線を受信するのに最も適した広帯域受信機』アイコムの『IC-R6』です。

前機種のIC-R5をより高性能化させ、2010年に発売されたIC-R6は2023年現在でもベストセラー受信機です。

IC-R6が一台あれば、航空も業務もバスも鉄道も消防署活系無線も聞けてしまいます。 ※2024年現在

『トランシーバーで仲間と連絡を取り合い』パトカー撮影に興じる女子大生がG7広島サミットに!との報道が話題!しかし、それは広帯域受信機です……

【IC-R6の基本仕様】

・サーチ&スキャン速度が高速
・どの周波数も感度が良い
・メモリーがプリセット済みなので購入して即、実戦投入可能
・バックライトつきで夜間も快適使用(5秒後に自動消灯)
・アルカリ単3電池×2本で約19時間、付属のニッケル水素充電池で15時間の受信が可能

ハンディ型広帯域受信機としてはサーチ&スキャン速度、受信感度、バッテリー持続性など、ライバル機と比べて航空無線受信機としては最高の性能であるがゆえ、多くの愛好家から支持されており、アマチュア無線や一般の業務無線も感度よく受信可能です。同機は初心者から中級者までおすすめの広帯域受信機です。

したがって、当サイトでは航空無線受信機として『IC-R6』をおすすめします。

IC-R6、ノーマル機と受信改造機の違いは?

IC-R6は優れた受信機ですが、皆さんお気づきの通り、IC-R6にはノーマルと『受信改造済み』の2種類があり、受信するにあたって両者には決定的な違いがあります。

筆者の周囲で、これを知らずにノーマルのIC-R6を購入したがために泣く泣く改造版を買い直した人が複数おります。実はここに落とし穴があります。

なぜ受信改造済みのほうが航空無線の受信で役立つのでしょう。

ノーマルのIC-R6を買ってはいけない理由は『歯抜け』だから

ズバリ結論を言うと、歯抜けだからです。

『IC-R6』には工場出荷時から特定小電力、鉄道、バス、国際VHF、消防無線(署活系の周波数は現在も有効)など多くのメモリーが、あらかじめプリセットされています。ところが、落とし穴があります。

まずは以下をご覧ください。アイコム公式サイトのIC-R6(ノーマル)の製品紹介にはこう書かれています。

0.100~1309.995MHzの広帯域をAM/FM/WFMでカバー。(一部周波数帯を除く)

引用元 アイコム公式サイト
https://www.icom.co.jp/products/amateur/products/receiver/ic-r6/

ノーマルのIC-R6では、”一部周波数帯を除く”の文言の通り、0.100~1309.995MHzの広帯域をAM/FM/WFMでカバーしているものの、一部周波数帯が飛び飛びで抜け落ちています。これを俗に『歯抜け』と言います。歯抜けの理由は大人の事情です。

  • IC-R6(ノーマル機)の受信可能範囲

IC-R6(ノーマル機)では以下の範囲のみ受信が可能です。

0.100 ~ 252.895MHz  255.100 ~ 261.895MHz
266.100 ~ 270.895MHz  275.100 ~ 379.895MHz
382.100 ~ 411.895MHz  415.100 ~ 809.895MHz
834.100 ~ 859.895MHz  889.100 ~ 914.895MHz
960.100 ~ 1309.995MHz

  • IC-R6(受信改造済み)の受信可能範囲

0.100 ~ 1309.995MHzまで歯抜けなしで連続受信

実はアイコムをはじめとするメーカーで作る業界団体のJAIA(日本アマチュア無線工業会)ではプライバシーにかかわる周波数を傍受させない取り組み、つまり自主規制を定めています。

買ってはいけない広帯域受信機は?

歯抜け部分を挙げると、411.895MHz~415.1005MHzの帯域。これは新幹線の列車公衆電話がまさに412.025~414.475MHzに割り当てられており、利用者のプライバシーを守るための自主規制です。このため、414MHzにはJR無線(Cタイプ)、役所の水防関係、そして民間では建設、運輸、商店などの幅広い簡易無線が割り当てられていますが、これらの無線がごっそりと受信不可となっています。

そして、こちらも旧規格のアナログコードレス電話を受信させないというプライバシー保護目的での自主規制なのですが、航空無線を受信したいエアバンダーにとっては261.895MHz~266.100MHz、そして379.895MHz~382.100MHzの歯抜けが致命的なのです。このUHF帯域に割り当てられたGCIが聞けないからです。

航空自衛隊の戦術用周波数『GCI』解説……公開すると逮捕される!?

迫力ある自衛隊のGCIが聞けないのでは、せっかく受信機を手に入れてもエアバンド受信の興奮は半減。「航空無線は好きだけど航空自衛隊の無線だけは興味がない」という方は少ないでしょう。

なお、八重洲無線は今でこそ脱退していますが、かつては加入メーカーの一つで、同社のVR-150などでもアイコム同様にプライバシーにかかわる周波数帯域の自主規制をしていましたが、脱退後に発売された後継機のVR-160(2022年に生産終了)ではフルカバーされており、同機で上述の周波数帯域を受信する場合は受信改造不要です。

また、比較的低く広範囲に飛ぶVHFに比べると、UHFでは電波の減衰が激しく、基地から近いか、よほど高い高度でなければ、自衛隊のUHF帯域受信は難しいものですが、心配無用。もともと、200~300MHz帯の受信感度には定評のあるアイコム。IC-R6の受信性能の高さはUHF帯域でもしっかり活きています。

アイコムIC-R6のレビューが高い理由は電池の持ちだった

IC-R6は総合性能が高くて航空祭に向いている

すなわち、一部の帯域が受信できないことがノーマルのIC-R6を買うべきではない理由です。

『受信改造済みのIC-R6』は0.100~1309.995MHzまで”歯抜けなくフルカバー”されます。そして、広帯域受信機の受信感度の良さと、自分が聴きたい無線の周波数帯域を自主規制で削られているか否かはそもそも別問題ということがおわかりいただけましたか。

専門店でもノーマル品と受信改造済みの二種類を並行販売しており、とくにネット購入時はご注意を。IC-R6のノーマルモデルと受信改造済みモデルとの価格差はほぼ無いので、やはり受信改造済みIC-R6がお得ですし、基本的に本サイトでは受信改造済みのIC-R6推しです。

また、IC-R6以外の受信機を購入する際も、上述したGCI等の周波数を狙いたい場合、歯抜け機種の場合は必ず「受信改造済み」と明記されている受信機を選びましょう。

IC-R6エアーバンドスペシャルとは?

また、航空無線の受信であれば、はじめから各地域ごとにメモリーがまとめられたエアーバンドスペシャルを購入したほうが使いやすい場合もあります。

全国の空港別に周波数があらかじめプリセットされたショップオリジナルの『エアバンド・スペシャル』でも『受信改造済み』と明記されていない限り、受信改造がなされていませんので、購入の際は注意が必要です。当サイトでは受信改造済みIC-R6のみを推奨しております。

ただ、エアバンドスペシャルであってもプリセットされたメモリーは全国の大規模空港の周波数に偏っており、ローカル飛行場の飛行援助局などは未登録が多いもの。

そこで、IC-R6をより使いやすくするため、自分にとって不要なメモリーやバンクを消去して、敢えて本体をまっさらな状態に戻す作業『オールリセット』を行う場合があります。そして悲劇が起きます。

IC-R6(受信改造済み)のオールリセットから受信拡張状態へ戻す方法

IC-R6の受信改造機のデメリット?

こんなに優れた『受信改造済みIC-R6』ですが、通常使用する上では何もデメリットがありません。しかし、あるとすれば、それは万が一の故障時の『修理対応』と言えます。

一般的に広帯域受信機の『受信改造』は裏ぶたを開けて内部の基盤についている抵抗チップを外す『ハードウェア改造』と、コマンドを入力する『ソフトウェア改造』の二つ。

IC-R6では小さなプラスネジを二本外し、本体裏カバーを開けると基盤が顔を出しますが、よく見ると不自然な跡が。これが抵抗チップをはんだごてで外したあとですが、この抵抗チップを外して裏コマンドを入力することで自主規制された周波数が受信できるようになるのです。メーカーの“ここ外せますよ”というわざとらしさが否めないのはともかく、このような各販売店独自に行なっている”基盤から抵抗チップを取り除く改造”はメーカー非推奨の改造です。『受信改造済みのIC-R6』は、メーカーの無償修理期間中に壊れたとしても、無償修理を受けられない可能性があります。

ただ、IC-R6に限って言えば、筆者が約10年間使用している間に何台も乗り継いできましたが、受信改造が施されているからといって、物理的にもソフトウェア的にも壊れたことは一度もありません。一度、壊れたら修理に出してメーカーの対応を確認したかったのですが、幸いなことに故障は皆無。なお、『受信改造済みIC-R6』が実際に故障した場合、まずは改造を行った購入店にご確認ください。

とりあえず、『受信改造済みIC-R6』で思いつくデメリットはこの程度。圧倒的にメリットが優っています。とはいえ、筆者の使用経験ではなにぶん壊れたことがないので、実際にはデメリットとして挙げて良いものなのか複雑な気持ちです。

IC-R6(受信改造機)でも受信できない無線は?

残念ながらIC-R6はオールモードの電波形式対応やデジタル受信機ではありません。受信できるのはアナログ方式のAM、FM、NFMモードのみ。デジタル変調方式には非対応です。

また、アナログ無線であっても復調できない無線があります。3-30MHzのHF帯で使用されるSSBモードは微弱な送信出力でもより遠くへ届くため、世界中と交信できるのが魅力です。しかし、IC-R6ではSSBに対応しません。

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航空無線に関して言えば、太平洋等の大海原を飛行する旅客機や貨物機の『洋上管制』がまさにHF帯域かつSSBモードのうちの『USB』を使用。このため、IC-R6では受信不可。さらに、別の理由も原因でIC-R6では受信ができません。詳しくは下記の記事を参照されてください。

【洋上管制解説…No.1】HFの航空無線『洋上管制』と飛行情報区(FIR)とは?

自衛隊でもHF通信が行われていますので、ミリタリーエアバンドを極めたい方にはIC-R6では物足りないかもしれません。

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念のために申し上げますが、こちらはIC-R6のデメリットというより、同価格帯の受信機全般に言えることです。

そこで当サイトでもご紹介しているとおり、HF帯のSSBモードを受信するには、SSB対応BCLラジオという受信機材を使いましょう。実はIC-R6の約半額で買えてしまいます。

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ただ、誤解して欲しくないのですが、IC-R6でAM短波放送が聴けないというわけではありません。むしろ、アンテナ次第でとても高性能です。『短波ラジオ』という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、この短波帯では世界中のラジオ局がAM短波放送をオンエアしており、深夜にこれらAM短波放送をIC-R6で受信できるのは大きな魅力です。国内では3.920MHz(夜間)でオンエアされている『ラジオ日経第1』などが有名です。

また、アマチュア無線では28MHzバンドはHF帯で唯一、FMモードによる運用が許可されていますが、Eスポによっては1000キロ先の局のCQがとても明瞭に受信可能でした。

『受信改造済みじゃないIC-R6』を買って泣く人が続出!その理由のまとめ

このように、2010年発売のIC-R6は今でもアイコムの稼ぎ頭として売れ続けている定番のベストセラー。それは受信感度、サーチおよびスキャン速度に裏付けされた確かな信頼だからです。IC-R6(受信改造済み)は航空無線および航空自衛隊専用無線『GCI』の受信をしたいなら、ノーマルではなく、受信改造済みのIC-R6を買いましょう。おわかりいただけたでしょうか。

  1. IC-R6はメモリーした100個の周波数を約1.2秒で一周する。
  2. IC-R6はノーマル版ではなく、必ず受信改造済みモデルを買おう!
  3. IC-R6(受信改造済み)はアナログ無線の受信では最強じゃ。
  4. IC-R6(受信改造済み)はオールリセットすると受信改造も戻る。直すにはもう一度コマンド入力が必要。
  5. IC-R6(受信改造済み)は基盤いじって抵抗取ってるから無償修理期間中でも有償修理となる可能性あり(不明)
  6. IC-R6(受信改造済み)のみがVHF航空無線をより楽しむためのベストな選択です!
  7. 古くて安い中古の歯抜け受信機は感度も速度も劣り、受信趣味や受信のお仕事にはまったく不適。

航空自衛隊の特別な周波数を受信したい場合、当サイトで推していない『歯抜け受信機』『安い昔の中古受信機』を買わないようにしてください。

最後に

傍受した通信を録音した音声や詳しい内容を他人に公開することは電波法によって禁止されているのでご注意ください。交信内容を批評研究目的で公表する場合はフィクションを織り交ぜ、実際に存在しない交信にするようお願いいたします。また、公共の場所で受信機を使う場合は必ずイヤホンをつけて聴取し、その内容は自分自身のみで聴取するようにお願いいたします。

広帯域受信機での受信、注意が必要な時と場合とは?大変なことになる前に!

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