【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、無線受信や運用に関して総務省総合通信局の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、各種記事はそれらの調査結果に基づいて構成しています。

米国のUHF帯FM無線「FRS」と「GMRS」は日本で使うと電波法違反!

FRS(Family Radio Service)とGMRS(General Mobile Radio Service)は、どちらも個人および家族の通信に使用されるアメリカの無線である。

FRSは最大2Wで資格も登録もいらない。一方、GMRSは米国FCC(連邦通信委員会)発行のライセンスが必要だが、アマチュア無線のように資格試験はなく、実質的に日本のデジ簡のような登録制である。出力もレピーターで最大50W、車載機や中継器にも対応し、スペックを見た限りでは仲間内の通信には十分すぎるスペックを誇っている。

しかし、これはあくまでアメリカ国内での話である。こうしたFRSやGMRS無線機は日本で使えるのか?という疑問に対し、結論から言えば「法的に使えない」と言える。

アメリカにおけるFRS、GMRSの運用実態を順を追って説明していこう。

米国のGMRS、FRS無線の登場背景

アメリカの無線制度も日本と同様、実に多様だ。アマチュア無線、CB無線が一般的であるほか、家族向けや小規模事業者の求める簡易的な業務無線のニーズを満たすものとしてFRSやGMRSがある。

日本では不法無線局として、とかく悪者にされるFRS(Family Radio Service)とGMRS(General Mobile Radio Service)。しかし、アメリカ国内ではレッキとしたフリーライセンス無線(正確にはGMRSはライセンスが必要だが試験はなし)であり、米国市民に親しまれている無線制度である。この両者の違いは主に以下のようなものである。

FRS(Family Radio Service)とは?

1996年、アメリカの連邦通信委員会(FCC)は、誰でも免許なしで使える家族向け短距離無線としてFRS(Family Radio Service)を制度化した。これは、当時のアマチュア無線や市民バンド(CB)に代わる、より安全で簡便な通信手段として、子どもや家族でも扱えることを前提に設計された。

したがって、FRSは資格や免許申請を必要としないフリーライセンス無線であり、買ったその場で開封してそのまま使える。特に広大な米国のアウトドアでの家族や友人同士による使用が想定されており、手軽に無線通信を楽しむことができる。

FRSはUHF帯のアナログFM通信を使い、建物の中や市街地でも比較的安定した通信ができる点が特徴。ウォルマートやアウトドア用品店では、FRS対応の無線機が2台セットで手軽に販売され、ハイキング、ショッピングモール、スキー場などでの連絡用ツールとして急速に普及した。

FRS無線機本体も子どもの使用を想定し、おもちゃ然とした簡易なトランシーバーであるが、最大出力は2Wである。ただし、アンテナ交換とレピーターは認められていない。手軽さだけで例えるなら、日本の特定小電力無線が近いかもしれない(ただし、特小は最大0.5W、レピーター使用可能)。

GMRS(General Mobile Radio Service)とは?

FRSと同じく、家族や小規模グループ向けに設計された同種の無線制度には短距離双方向音声通信用に設計された陸上移動FM UHF無線のGMRSがある。

GMRSは米国連邦通信委員会(FCC)によって認可されたUHF帯(462MHz帯および467MHz帯)のFM無線サービスだ。主に個人・家族のレジャーや連絡用に使われ、免許制度(有料、登録制)を経て利用される。日本の電波利用料に相当する「ライセンス使用料」を納める必要がある。

無線の特徴は、次の通りである。

  • 周波数帯:462.550 MHz ~ 467.725 MHz(UHF帯)

  • 出力:最大50W(通常は手持ちで1~5W、50Wは中継含む最大値)

  • モード:FM

  • 通信距離:見通しで数km〜数十km、中継器で拡張可能

GMRSは通常462MHzと467MHzの周波数帯(UHF帯)を使用するため、VHFよりも理論上は見通し距離で劣るが、建物や地形の障害物を貫通しやすく、都市部や森林などでの通信に適し、キャンプ、ハンティング、ロードトリップなどアウトドアでよく使われているほか、小規模事業者の業務利用も可能でアメリカでは市販のハンディ機・車載機が広く普及している。

項目 内容
資格 18歳以上の米国市民。個人ライセンスのみ発行(一部旧制度下の非個人局も存在)。
申請手続き
  1. FCCアカウントの作成
  2. FCC登録番号(FRN)の取得
  3. FCCフォーム605の記入・提出(重犯罪歴の有無を申告)
  4. $35の申請手数料を支払い
ライセンスの有効期間 10年間有効。90日前から更新申請が可能。
カバレッジ ライセンス保持者本人およびその家族(配偶者、子供、親など)も同じライセンスでGMRSラジオを使用可能。

高出力とレピーターの利用により広い通信範囲をカバーし、家族間やコミュニティ内でのクリアな音声通信が期待できる。GMRSを使用するには、アメリカでは連邦通信委員会(FCC)から発行されるライセンスが必要だが、試験はない。このライセンスは、個人およびその家族全員が使用でき、10年間有効である。比較的手軽な通信手段としてアメリカでは人気である。

GMRSでは、高性能なアンテナのほか、レピーターステーションの使用が許可されている。レピーターを利用することで、通信範囲をさらに拡大することができる。特に、アメリカの広大な山間部や広範なエリアでの通信においては、レピーターが重要な役割を果たしている。

GMRSについての詳細な情報は、以下の参考サイトを参照:

現在では、GMRS(General Mobile Radio Service)とチャンネルを共用する形で一部互換性のあるFRS/GMRS無線機も販売されている。ただし、GMRSは出力が高く中継器の使用も可能で、FRSとは運用上の前提が異なる。FRSは462MHzと467MHzの周波数帯(UHF帯)を使用。UHF帯は、建物や地形の障害物を貫通しやすく、都市部や森林などでの通信に適している。

GMRSはFRSと違って、アンテナ交換とレピーター使用が認められ、無線機単体で5Wまで、レピーターで50Wまで可能である。つまり、GMRSはFRSのデラックス版といった感じである。

補足説明

基本的に「FRSは免許不要」「GMRSは免許必要」だが、最新のFCCルールでは、一部のハイブリッド(FRS/GMRS兼用)機器は、2W以下なら無免許のFRSとして使用可能という例外もあるため、完全には切り分けられない。そのため、米国で使用する場合は事前確認が必要。

日本で使える?──アメリカのUHF帯FM無線「FRS」と「GMRS」の落とし穴

では、このFRSとGMRS、日本でも使えるのだろうか?GMRS機器が使用する周波数帯は、日本国内では他の重要な業務無線と重複している可能性がある。たとえば、467MHzのUHF帯は日本の制度上、デジタル簡易無線局(免許局)の一部と干渉しうるため、使えない。

結論から言えば──日本国内での使用は違法。──正確に言えば「使ってはいけない」のだ。

日本ではなぜ使えないのか?

理由①:技適未取得機器の「送信」は電波法違反

FRS無線機はFCCの認証を受けた米国仕様の機器であり、日本の「技術基準適合証明(技適マーク)」を取得していない。日本の電波法では、技術基準適合証明(いわゆる「技適マーク」)のない無線機は送信してはならないと定められている。GMRS無線機は当然、米国内の規格に従って製造されているため、日本の技適マークが付いておらず、たとえ一瞬でも送信した時点で電波法違反となる。罰則は厳しく、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、またはその両方が科されることもある(電波法第110条)。

理由②:周波数帯の重複による混信リスク

FRSの使用周波数(462〜467 MHz帯)は、日本では業務用途と重なる可能性がある。つまり、誤送信によって公的・商業インフラに深刻な影響を与える危険がある。

理由③:総務省の明確な警告

総務省および地方総合通信局は繰り返し、「外国製無線機(FRS/GMRS含む)の送信利用は、日本では電波法違反」と明示している。空港や港湾の税関でも、FRS機の使用・所持には注意が促されている。

たとえ“家庭向け”で“微弱な電波”でも、外国製FRS機を日本国内で使うことは電波法違反。

FRS・GMRS無線機、日本での使用は電波法違反──総務省が注意喚起

総務省の総合通信局は、米国仕様の無線機「FRS」および「GMRS」が、日本国内で不適切に使用されている事例が後を絶たないとして注意を促している。

これらの無線機は、主にインターネット通販や一部量販店などで「実験用」「海外旅行向け」として販売されており、以下のような宣伝文句が確認されている。

  • 「○○マイル(△△km)の長距離通信が可能」

  • 「日本国内では使用できません。実験用途として販売します」

  • 「海外旅行先での通信にぴったり」

  • 「格安トランシーバー○台セット(数千円)」

  • 「特定小電力無線に対応」

  • 「微弱出力機能付き」

  • 「出力10mWに切り替え可能」

  • 「高出力送信は不可」

  • 「非常災害時の連絡手段に」

  • 「過激飛びMax」

  • 「特定小電力20ch+独自22ch、合計44ch装備」 など

こうした表示により、国内使用が禁止されていることに気づかず購入・使用してしまうケースが多いという。

たとえば信越総合通信局の報告によれば、同局管内ではスキー場での利用が確認されており、スキーヤー同士の連絡、競技運営、駐車場整理、観光案内、測量業務など、さまざまな場面でFRSやGMRSが使われていた。

これらの機器を無許可で使用した場合、電波法第4条違反により1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される。さらに、妨害電波によって公共・重要通信に支障を与えた場合には、5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科される可能性がある。

正しい知識で、適法な無線運用を

総務省は、「海外仕様の無線機を日本国内で使う前に、技適マークの有無や周波数帯の適合性を確認することが重要だ」として、不用意な使用による違法行為に注意を呼びかけている。

参照:総務省信越総合通信局 https://www.soumu.go.jp/soutsu/shinetsu/sbt/kankyo/frs.html

技適マークの有無がカギ──違法無線機を見分けるポイント

総務省は、無線機器を日本国内で合法的に使用するためには、「技適マーク(技術基準適合証明等のマーク)」の有無が重要であるとして、購入時の確認を強く推奨している。

この技適マークは、日本の無線設備が定められた技術基準に適合していることを示す証であり、無線機器(アマチュア無線、デジ簡など)が国内で合法的に使用できるかどうかの判断基準となる。

とりわけ、米国仕様のFRS(Family Radio Service)やGMRS(General Mobile Radio Service)といった無線機器には、技適マークが付いておらず、国内での使用は電波法違反となる。

技適マークは、日本国内で製造された製品に限らず、海外から輸入された製品であっても、国内で使用するためには必須である。技適マークが無い場合、その製品を電源を入れて送信可能な状態にすることすら原則として禁止されている。

誤って技適なしの無線機を購入・使用した場合、本人に悪意がなくても電波法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性がある。

技適マークのデザインに注意──旧タイプも有効

技適マークには現在のものと旧タイプのものが存在する。いずれのマークも有効であり、旧型が付いている機器も使用可能である。

  • 現在の技適マーク:平成7年4月以降に採用されたタイプで、より簡素化された図柄。

  • 旧技適マーク:昭和62年10月から平成7年3月まで使用されていた。やや古い無線機器にはこのマークが表示されている。

購入時には、マークの有無とともに、表示の位置や印刷の鮮明さなども確認することが重要だ。

参照:総務省東海総合通信局 https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/kohosiryo/24/0829.html

「受信だけなら所持していてもOK」?

日本の電波法上では、送信機能を完全に潰して受信専用にする場合は合法だと考えられるが、受信専用への改造には高度な技術が必要だ。加えて、電波が出るか出ないかの実験のためであっても、うっかり誤操作で送信してしまったなら、アウトである。

参考例:総通が「無免許でアマ無線機を車載する人がやりがちな取締りを逃れるための苦しい言い訳」を公式に暴露!

総務省の見解としては「技適のない送信機能付き無線機の所持そのものは違法ではないが、送信および送信可能状態は電波法違反」と明言している。例えば、送信可能状態で車に積んでいた場合などが該当する。

参考例:【特集】アマチュア無線の電波法違反、実際の処分は?──当事者が明かす「略式裁判」の実態

そもそも、FRSやGMRSは単純なFM無線なので、その電波形式の周波数を単に日本国内で受信したいという目的であれば、IC-R6などの広帯域受信機で間に合う。

受信目的であっても、この無線機を受信専用に改造したり、わざわざ国内で所持する意味はないといえる。


✔まとめ表

項目 日本国内でのFRSおよびGMRS無線機
送信 ❌ 完全アウト(電波法違反/最大1年懲役または100万円以下罰金)
受信 ⚠️ 実質アウト(完全に送信機能を潰せば合法。そうでなければ“送信できる状態”でアウト)
合法利用 ✅ 特定小電力無線、デジタル簡易無線(登録局)など

まとめ

FRSおよびGMRSはアメリカでは人気の無線、でも日本では使えない

結論:FRSおよびGMRS無線機は便利で出力も高く、アウトドア無線として理想的に見えるが、日本国内での送信使用は完全に違法

万が一、他の重要通信に干渉した場合、技術的な誤りでは済まされない。

日本国内で「使える」どころか、「完全に送信機能を潰さない限り、送信および、送信できる状態で車などに積んでいた場合もアウト」。

個人輸入やオークションなどで手に入るGMRSに手を出す前に、国内利用は絶対に避け、合法的な国内無線を選びたい。

もし「アウトドアでの無線を使いたい」と思うなら、日本仕様の“技適マーク付き”無線機を検討するのが安全で現実的。

合法的に国内で無線通信を楽しみたいなら

無線通信の種類 資格 電波利用料 登録・開局申請など
特定小電力トランシーバー 不要 不要 不要
デジタル簡易無線(登録局 不要 登録申請が必要
アマチュア無線 必要(従免/局免) 開局申請が必要(ゲスオペ制度あり)

といった制度に適合した手段を選びたい。

※本記事は法制度の一般的な解説を目的としたものであり、運用上の詳細は総務省の最新情報を確認されたい。

参照:総合通信局 https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/denpa/osirase/gaikokumusen.html

東北総通の電波啓発動画が誤解を招く?アマチュア無線家から大ブーイングの理由とは

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