広帯域受信機で未知の周波数を探す作業はミステリアスで面白いもの。
しかし、闇雲にサーチしても効率よく受信できません。
既知の周波数をあらかじめ受信機に登録したうえで、スキャンとサーチを適宜使い分ける必要があります。
基本的に広帯域受信機はスキャンとサーチという二つの機能が搭載されており、普段の受信では使い分けて受信します。
メーカー各社によって多少の違いはありますが、広帯域受信機のスキャンとサーチ機能は概ね以下のような違いがあります。
- スキャン機能(アイコムではメモリースキャン):
- 登録した周波数の信号の有無を探す: 事前にメモリーした特定の周波数の信号を検知し、信号が見つかると停止して受信します。あらかじめ受信機の『メモリーバンク』にお目当ての周波数(118.XXXМHzなど…)を1波ずつ、いくつも手作業または専用ソフトで登録(メモリー)しておき、受信機にそれらの周波数を自動で一波ずつ高速でチェックさせ、出ている信号を受信する機能がスキャン(アイコムではメモリースキャンと呼びます)です。
- サーチ機能(アイコムではVFOスキャン):
- 指定された周波数範囲から信号を探す: 事前にセットされた不特定の周波数範囲を上限から下限まで順番に走査し、出ている信号を探し、信号が見つかると停止して受信する機能がサーチ(アイコムではVFOスキャンと呼びます)です。
つまり、スキャン機能は「既知の周波数」をあらかじめ複数登録し周波数を検波して、信号があれば復調する機能です。
一方、サーチ機能は事前に指定された特定の周波数範囲内で「未知の周波数」の信号を探すための機能です。
使い分けは?
たとえば、航空無線で通常使用される航空管制用周波数の帯域は自衛隊専用波まで含めると118MHzから142MHzまで。
これらの間を一つの周波数に限らず、自分が今いる現在地付近で使われている周波数を探したいのなら、サーチ(アイコムではVFOスキャン)機能を使用します。
また、アマチュア無線のバンド(たとえば144.000MHz~145.990MHz)のように、呼び出し周波数や非常周波数など以外の通常交信で使う周波数がバンド内で定まっていない(事実上、特定の周波数を占有する局もおりますが……)場合なども、信号の有無を上から下まで高速で繰り返し探し続け、信号があれば自動的に止まり、受信できるので便利です。
つまり、空港管制など、すでに広く公開された既知の周波数であれば、あらかじめ登録しておき、効率的に受信しましょうというのがスキャン(アイコムではメモリースキャン)で、どこにも載っていない、誰も知らない、知られちゃいけない(!?)未知の周波数を探すのがサーチ(アイコムではVFOスキャン)です。
- スキャン機能を使う場合(例):
- すでに登録されている周波数の交信を聴く: すでに広く知られている周波数はあらかじめ登録しているので簡単に受信できます。
- サーチ機能を使う場合(例):
- 特定されていない周波数や使用の定まっていない周波数の交信を探し出す: アマチュアバンドのようにバンド内の不特定の周波数が使われている範囲の周波数を探して受信できるほか、地元のマイナーな事業者の無線や航空自衛隊のGCIなど判明していない『未知の周波数』を探せます。
とくに、サーチ機能が役立つのが航空自衛隊のGCI周波数の特定です。
GCIは非公開であり、仮に承認欲求強き者がSNSなどで公開すると、自衛隊がすぐに周波数を変更するので誰も公開しません。したがってもっとも未知の周波数です。
つまり、一般の業務無線や航空管制用の周波数など、すでに公にされている周波数ならば、あらかじめ一波ごとにメモリーして、スキャン(アイコムではメモリースキャン)するほうが、闇雲なサーチより効率良く受信できます。
基本的に、これらスキャン(アイコムではメモリースキャン)とサーチ(アイコムではVFOスキャン)を適宜使い分けることで、効率よく受信できるわけです。
平日に時間が許せば、IC-R6の高速VFOスキャン性能を活かして、地元で飛び交う業務無線などの電波を低い順からサーチしながらまとめあげ、ひとつづつ登録していくのもグッド。
※広帯域受信機については広帯域受信機のページにて解説しています。
≫ 航空無線を受信するためにはまず広帯域受信機を購入しよう!
≫ 広帯域受信機ではスキャンとサーチを使い分けて効率的に受信しよう!
≫ 受信機を買ったら高性能アンテナも絶対に買ったほうが良い理由とは?
周波数のメモリー作業
受信機の購入直後に行うことは、自分で1波ごとに手作業またはPCと専用ソフトならびに専用ケーブルを使い、お目当ての周波数をひとつづつ登録していくメモリー作業です。
その後はそれらの周波数をスキャン(アイコムではメモリースキャン)して受信するだけでOK。
幸いなことに貴方がIC-R6を選んだのなら、全国の主要な「空港」「鉄道」「高速道路」「バス」「特定小電力」「VHF消防・救急」「UHF消防・救急」などが各バンクごとに、あらかじめプリセットされています。
デジタル化により廃止された「VHF消防・救急」や「高速道路」以外なら、どれをスキャン(アイコムではメモリースキャン)しても、とりあえずは受信可能でしょう。
とはいえ、自分の地元で必ずしもそれら『プリセット済み周波数』が使われているとは限りません。
むしろ、地方の小規模な飛行場の飛行援助局などは未登録の場合も。
ですから、逆にこれら『あらかじめプリセットされたメモリーバンク』はありがた迷惑で、邪魔な存在になりうる場合もあるのです。
そこでスッキリと削除してしまうことで、より使いやすくさせる『オールリセット』もユーザーの間では普通です。
ただ、それは時に悲劇を生む場合もありますので、実行にあたっては十分に注意してください。
周波数の受信可能範囲とは?
広帯域受信機にとって『受信できる周波数の範囲』はとても重要な基本性能。
ショップの広帯域受信機の商品ページに行くと、よく「受信改造済み」と書かれています。
これは「受信できる周波数の範囲を改造して広げていますよ」という意味です。
実は、一部の広帯域受信機はノーマル仕様だと自主規制で受信できない範囲があり、可聴周波数の範囲が『歯抜け』のようになっています。
このような受信機は『歯抜け受信機』と呼ばれ、受信愛好家からは敬遠されがちです。
実は筆者が推しているアイコムの『IC-R6』も本来は歯抜け受信機なのです。
そこで各ショップでは、ノーマル機には『受信拡張改造』を行って、受信可能範囲を広げてセールスポイントとしているわけです。
広帯域受信機を買うのであれば、受信改造モデルをおすすめします。
ただ、はじめから歯抜けになっていない受信改造不要の受信機もあります。
なぜ歯抜け受信機と、歯抜けではない受信機があるのでしょうか。
それはメーカーが加盟する自主団体の自主規制にあります。特定の周波数を受信できなくする(=歯抜け措置)ことでプライバシーにかかる懸念に配慮しているのです。
受信機のザーザー音が酷い場合は
受信機にメモリーした周波数は、普段交信が行われていなければなにも聞こえませんが、FMの特性として、無信号時にザーッという耳障りな雑音が発生する場合があります。
その際はノイズスケルチを調整してみましょう。スケルチとは「無視」という意味で、雑音を無視してくれる大変ありがたい機能です。
IC-R6では最初の設定として『オート』になっていますが、普段はできるだけ遠方の小さな信号も受信出来るように『1』に設定すると良いでしょう。
逆に、スケルチの数値を大きくすると、近くの強い信号のみを拾い、不明瞭な弱い信号ではスキャンが止まらなくなり、煩わしさが軽減されます。
『オート』や『1』の状態で雑音が酷く、スキャンが止まる場合は、スケルチレベルを4か5くらいに大きくしてみましょう。
また、使う環境として、パソコンやLED照明などの家電からはできるだけ受信機やアンテナを離すと、雑音が軽減されるでしょう。
まとめ
効率よく受信したいのなら、既知の周波数をあらかじめ受信機に登録したうえで、スキャンとサーチを使い分けましょう。