覆面アンテナ風『MG-450-TP』による430MHz帯送受信実験動画

「せーんぱい!高すぎます!」

「キャベツか?」

「覆面パトカーマニアの間で人気のタクシー用ユーロアンテナのMG-450-TPですよ!31,200円→44,660円です!」

「3万って、3年前の価格だろ?世界情勢激変で電子部品が軒並み値上げしてるし、店は楽天税も納めなきゃならんのよ」

「それにしても物価が高すぎますよ…。家計を切り詰めて毎日豚汁とライスなのに……。主婦は限界です」

「450TPが高いなら本家のMG-UV-TPを買えばいいじゃない?」

「えー!売ってないですよね?」

「そうでもない。最近は平気で本物の中古覆面パトカーがアンテナ付きで売られてるから、それを狙うのだ」

アンテナ付き(同軸ケーブルの処理きれい♪)の元本物覆面パトカーのティアナが中古で売られている

「そんなお金ないです〜!」

MG-450-TPによる送受信実験

ってことで、まだまだ一部で人気のMG-450-TP。そして、それをアマチュア無線の430MHz帯での送受信で使えるか?性能はどう?という実験の様子がYOUTUBEで公開されている。

実験の主は免許や資格のいらないフリーライセンス無線を紹介するももチャンネル! 【無線と車でアウトドアなYouTuber】を主催されており、無線好きな方の視聴者も多い『ももすけ』さん。記事内の引用について 『ももチャンネル! 【無線と車でアウトドアなYouTuber】』より。

念のためにおさらいしておくと、MG-450-TPは日本アンテナ製のタクシー事業者(デジタルタクシー無線)向けユーロアンテナ。

デジタル・タクシー無線はDJ-X100でより簡単に受信可能に!

警察の覆面パトカー用アンテナMG-UV-TPと極めてソックリな製品。

MG-450-TPは業務用無線アンテナであるため、一般のアマチュア無線ショップでは扱いがないが、業務無線専門店で販売されており、本家のMG-UV-TPに比べれば、断然入手しやすい。

 

そのため、“本家MG-UV-TPの血を引く由緒正しい代替品”として支持する愛好者の声も多い。

覆面パトカーのアンテナを種類ごとに解説!偽装アンテナから車内アンテナの増加へ

 

車のルーフトップにマグネットで設置するアンテナは垂直に立てた場合、広いルーフ面がパラボラアンテナめいた作用をするため、エレメントの短いMG-450-TPでも、ハンディ機付属アンテナでの車内受信に比べれば、感度がはるかに良好。しかも目立たない。

そして、アマチュア無線のUHF帯(430MHz)において、実際の送受信検証を行うのが以下の動画。

SWR(定在波比)を測定

まずは、その本来の目的であるデジタルタクシー無線の450MHz域付近のSWR(定在波比)を測定。

すると画像のとおり1.27を示している。さすがはタクシー無線用アンテナ。450MHzにバッチリと同調するように設計されている。

450MHzでのSWRは1.27にまで落ちている。SWRは1.5以下が理想とされ、 3以下が実用上の限界とされている。すこぶる良好。これならアマの430MHzでもイケるんちゃうの?オッス、オラ無線従事者、いっちょやってみっかなどと我々が考えてしまうのも無理はない。 画像の出典 ももチャンネル! 【無線と車でアウトドアなYouTuber】

430MHzのマッチングは?

そして、アマチュア無線の430MHzのマッチング。なんと、こちらも1.3前後とすこぶる良好。

ちなみに422MHz帯域の特定小電力トランシーバーの帯域もチェックすると、こちらも良好な数値を示しているため『意外と航空無線や鉄道無線、アマチュアの144MHz帯の広帯域受信も聞けるんじゃないですかね』と、ももすけさんは評価。

なお、筆者自身も総務省によるアナログ無線の周波数再編計画が推し進められる寸前の数年前、MG-450-TPと広帯域受信機のIC-R6にて“受信実験”を敢行。

118〜140MHzの民間/自衛隊エアバンド、各種業務無線や官波が割り当てられていた150MHz帯、そして役場の防災移動系などが多い460MHz帯、いずれも良好であったことを記させていただきたい。

今回のももすけさんの実験では、実際にアマチュア無線のハンディ機『FT3D』を用いて、レピーターと呼ばれる中継局に搬送波を送信し、その作動を確認する作業『カーチャンク』を行なって、返ってきた電波の強度をSメーターで確認するもの。

レピーターとその仕組みについては以下の記事を参照のこと。

アマチュア無線のレピーターの仕組みと使い方

レピーターから返ってきた信号強度、つまり電波の強さはフルスケール(つまり、アンテナ3本)となっている。受信はすこぶる良好。

ももすけさんは前回、アマゾンで低価格の車内設置型の覆面アンテナを購入して受信実験を行なっているが、日本アンテナの450TPの予想外の感度に驚いた様子だ。画像の出典 ももチャンネル! 【無線と車でアウトドアなYouTuber】

レピーターを使って無線交信する方式を『山かけ通信』と呼び、警察無線ではこれが基本であるが、アマチュア無線でも全国各地にレピーターが設置されており、山かけ通信が利用できる。

警察無線用のMG-UV-TPのような短いアンテナでも、本部と遠方の無線局同士が問題なく送受信できる理由は、まさにこの山かけ通信のおかげ。

さらに警察無線では個別PCの車載無線機にも中継機能を備えており、不感地帯ではPC自体が”中継局”になることも強み。

アマチュア無線や受信のみに関してはアンテナに『技術適合基準(いわゆる技適)』による法的な制約はないため、このような実験が自由に行える。画像の出典 ももチャンネル! 【無線と車でアウトドアなYouTuber】

というわけで、ももすけさんの実験の結果、覆面アンテナ風『MG-450-TP』によるアマチュア無線の430MHz帯での送受信はとりあえず問題なく、十分実用的に使えるということがわかった。

マグネット式で着脱容易、ダサくないどころか、むしろ車がカッコよくなる魔法のアイテム(!?)こと、MG-450-TP。まさに『キミのクルマが役所のクルマに!?』である。キミの愛車が渋滞の先頭になってしまう。懐かしい。

本来の無線用アンテナとして実験目的で使う場合は、受信機やアマチュア無線機での利用にとどめたい。

デジ簡の送受信実験はNG

さて、誤解のないように申し添えるが、ももすけさんの今回の実験は『アマチュア無線機による430MHz帯での送受信実験』であり、また筆者の過去の実験も『広帯域受信機による受信実験』であり、いずれも『デジ簡の送受信実験』ではない。

というのも、前提としてデジ簡では技適(※wikipedia)の認証を受けていないアンテナの使用は認められておらず、万が一未認証のアンテナで送信してしまうと、電波法違反になる恐れがあるためだ。

たとえ、350MHz帯対応の『MG-UV-TP』でも、デジ簡アンテナとしては技適を受けておらず、法的には使えないと言えるだろう。

覆面パトカーみたいなダッジチャレンジャーSR8がデジ簡(車内秘匿アンテナ)装備!

若き僧が僧衣を脱ぎ捨て、ドリフトに没してタイヤを坊主にしていく姿をドキュメンタリー風に記録しているYOUTUBEチャンネル『you寺FACTORY』が今、じわりと人気だ。

茨城県にある『向山寺』の副住職として、小気味良いショート編集と、どこかとぼけた口調で車好きから支持されている『ドリフト僧侶こまっちゃん』が、今回はある男性の愛車『ダッジ・チャレンジャー』を紹介。

黒くていかついアメ車然とした風体だが、驚くことに米国警察の覆面パトカー仕様に改造され、ダッシュライトやサイレンアンプも備わっているようだ。

いざ、車内の紹介に入ると、こまっちゃんが無線機に気付き『これ、何に使うんですか?』と、アンテナ職質の警察官の如く尋ねると、オーナーの男性は『これ、パトカー になってて・・・。そのグループで共通の無線積んでて』と一言。

『今さらっと”パトカー になってて・・・”って言ったけど、パトカーなんですか!?』と困惑するこまっちゃん。

『パトカーなんです!』とオーナーの男性。

車内からは手錠も発見され、これにはこまっちゃんも戸惑うしかない。

さて、このダッジ・チャレンジャーは八重洲のデジ簡機『FTM320R』を搭載しているようだが、車外にアンテナは見当たらない。

他人の車のアンテナが気になって仕方がない筆者が『ん?車内アンテナかな?』と思ったら、やはりリアウインドウ内側にそれらしきモノを装備しているようだ。

この車内アンテナはアマゾン等で販売されている『351MHz デジタル簡易&デジタル登録局用ガラス貼り付けアンテナ 過激飛びMAX』と思われるが、もしそうなら、このアンテナはデジ簡用アンテナとして技適を取れていないという指摘もある。

前述の通り、一般的にはデジ簡では技適認証のないアンテナで電波を送出すると電波法違反となりかねないため、今一度の確認が必要かもしれない。なお、技適のないアンテナを購入すること自体に問題はない。

https://twitter.com/KUMAMOTO_M32/status/1281147215197532163

まとめ

というわけで、今回の覆面アンテナ風『MG-450-TP』による430MHz帯送受信実験という興味深い実験は、問題なく運用できそうな可能性を秘めていることがわかったようで、とても有意義な実験に終わったようだ。

移動体通信において送受信感度を上げたいなら、是が非でもアンテナを車外に出すのは常識とはいえ、筆者のようにアマチュア無線用アンテナを隠してしまいたい、あるいは偽装したい無線従事者資格を持つ人や、デジ簡といったフリーライセンス無線を楽しむ人も多いはず(そんな変態はいません)。

アマチュア無線局がアンテナを隠すのは悪いこと?

そんな中でアマチュア局には”救世主”となるアンテナが『MG-450-TP』なのかもしれない。実際に車に装備して運用されている局長もいらっしゃるようだ。

残念ながら現在、国内のメジャーなアンテナメーカーから販売されているアマチュア無線用アンテナにしても、技適認証済みのデジ簡用アンテナにしても、MG-450-TPのようなスタイルの良い製品は皆無

とはいえ、これまでC社さんはデジ簡およびアマチュア無線用ドルフィン型アンテナ、D社さんはデジ簡用ユーロアンテナを発売してくれるなどしてくれている。

ただ、いずれもコンセプトとしては良いのだが、我々が求めるスタイルじゃなかったようで、いずれも廃盤となっている。

ももすけさんの動画に『ミエAC129局』として頻繁に登場するアタックさんも『MG-450-TPにDCR(351MHz)用があればいいのだが』とおっしゃっており、筆者も日本アンテナさんからMG-450-TPの流用でDCR用351MHz対応型がいつの日か発売されるよう願っているのが正直なところ。

https://twitter.com/mieac129/status/1606229585263095808

それまではいい子にしてアマの433MHzで遊んでますから。でも、ついうっかり144MHzでもオンエアしてしまい、ファイナルを壊してしまったりして……(笑)

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