ラジオの電波は、海も山も国境線も意に介さず、まっすぐ遠くへ飛んでいきます。
国家の仕組みや思想が違っていても、その電波は相手国の空を抜け、家庭や職場の受信機へと届いてしまうのです。
それゆえ、情報を統制したい国は、国外への宣伝放送を仕掛けたり、逆に自国民が外国の放送を聴けないように電波をかき消す妨害を行います。
広い範囲に声を届けるためには、長距離を安定して飛ぶ電波が必要です。
その条件を満たすのが、中波(AM放送帯)や短波です。
特に短波は、電離層で反射しながら地球を巡り、数千キロ先にも到達できるため、国際放送の大黒柱として使われてきました。
国同士で周波数を分け合う国際的な取り決めも存在します。
今回は、この短波の特性をわかりやすくひも解きながら、海外放送を効率よく受信するコツを紹介します。
さらに、インターネット全盛の今なお短波放送が息づく理由についても掘り下げていきます。
なぜ今も短波ラジオか
インターネットや衛星通信が発達した今、短波放送は時代遅れに見えるかもしれません。
しかし、世界の視点で見れば、事情はそう単純ではありません。
第一に、短波はインフラに依存しないという強みがあります。
受信に必要なのはアンテナとラジオだけで、光回線も携帯基地局も必要ありません。
災害や停電で通信網が途絶えても、短波は届きます。
この点は、地震・洪水・紛争地域など、非常時の情報伝達において非常に重要です。
第二に、短波は検閲や遮断をすり抜けやすい性質を持っています。
インターネットはアクセス制御やDNSブロックが可能ですが、電波は空を漂い、国境を越えてしまいます。
北朝鮮など一部の国では妨害電波を出しますが、完全に遮断するのは難しく、真実を求めるリスナーは周波数を探し当てます。
海外短波放送を楽しむための受信テクニック
短波放送を聴くには、まず対応するラジオが必要です。
最近は手のひらサイズのDSPラジオでも十分性能があり、5,000円前後から購入できます。
本格的に楽しむなら、周波数を細かく合わせられるデジタル表示付きの機種がおすすめです。
1. アンテナは「長い・高い」が基本
短波はアンテナの長さと設置位置で受信状況が大きく変わります。
室内で聴く場合でも、付属ロッドアンテナをできるだけ伸ばし、窓際に近づけると感度が上がります。
さらに本格派は、10〜15メートルほどのワイヤーをベランダや庭に張って、外部アンテナとして接続すると、遠方局の信号もキャッチしやすくなります。
2. 周波数の「ゴールデンタイム」を狙う
短波は昼と夜で届く距離や周波数帯が変化します。
昼は高め(15〜21MHz)、夜は低め(5〜9MHz)が有利です。
また、放送スケジュールは国際放送の公式サイトやDXクラブの情報を参考にすると効率的に探せます。
3. 妨害やノイズを避ける工夫
家電やLED照明は短波にノイズを出すことがあります。
可能ならそういった機器から離れて受信し、ラジオの向きを少しずつ変えてみるのも効果的です。
4. 受信ログを残す
どの局を何時に、どの周波数で聴いたかを記録すると、次回の受信計画に役立ちます。
SNSやブログで公開すれば、同好の士と情報交換ができ、楽しみが広がります。
世界の有名国際短波放送局
短波放送の魅力は、世界中の「声」を直接受信できることにあります。
ここでは、比較的受信しやすく、リスナーに人気の高い国際放送局を紹介します。
1. BBC World Service(イギリス)
世界で最も有名な国際放送のひとつ。
ニュースの正確さと幅広い文化番組が魅力で、英語学習にも役立ちます。
ヨーロッパ発の落ち着いたトーンが特徴。
2. Voice of America(VOA・アメリカ)
米国政府系の国際放送。
英語ニュースの発音が明瞭で、リスニング教材としても人気。
政治・経済・科学とジャンルも広い。
3. 中国国際放送(CRI・中国)
多言語で発信しており、日本語放送も存在します。
中国の国内事情や文化紹介が多く、独自の視点が感じられます。
4. ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI・フランス)
音楽・芸術・食文化など、フランスらしい番組が魅力。
フランス語以外にも英語やアラビア語での放送があり、国際色が豊かです。
5. ラジオ・オーストラリア
南半球からの短波放送で、太平洋地域のニュースや文化を発信。
気候や季節感が日本と逆なのも面白いポイント。
6. KBS World Radio(韓国)
韓国のニュースやエンタメを中心に、日本語放送も実施。
K-POPや食文化など、ポップな内容も多く親しみやすい。
日本から聴きやすい海外短波放送の例(参考)
※周波数や時間はシーズンごとに変更されるため、最新情報は各局の公式サイトやDX情報を確認してください。
放送局 | 言語 | 参考周波数(MHz) | 日本時間で聴きやすい時間帯 |
---|---|---|---|
BBC World Service(UK) | 英語 | 6.195 / 9.740 | 朝〜午前中(5〜10時) |
Voice of America(USA) | 英語 | 7.465 / 9.885 | 早朝〜午前(4〜9時) |
中国国際放送(CRI) | 日本語 | 7.320 / 9.570 | 夜(19〜22時) |
RFI(France) | 英語 | 7.370 / 9.590 | 深夜(0〜3時) |
ラジオ・オーストラリア | 英語 | 9.580 / 15.505 | 午前〜昼(8〜13時) |
KBS World Radio(韓国) | 日本語 | 9.775 | 夜(20〜23時) |
季節別 短波受信ガイド(日本向け・参考)
春(3〜5月)
-
BBC World Service(英語)
周波数:6.195 / 9.740 MHz
おすすめ時間:朝5〜10時 -
VOA(英語)
周波数:7.465 / 9.885 MHz
おすすめ時間:早朝4〜9時 -
CRI(日本語)
周波数:7.320 / 9.570 MHz
おすすめ時間:夜19〜22時
夏(6〜8月)
-
RFI(英語)
周波数:7.370 / 9.590 MHz
おすすめ時間:深夜0〜3時 -
ラジオ・オーストラリア(英語)
周波数:9.580 / 15.505 MHz
おすすめ時間:午前8〜13時 -
KBS World Radio(日本語)
周波数:9.775 MHz
おすすめ時間:夜20〜23時
秋(9〜11月)
-
BBC World Service(英語)
周波数:6.195 / 9.740 MHz
おすすめ時間:朝5〜10時 -
VOA(英語)
周波数:7.465 / 9.885 MHz
おすすめ時間:早朝4〜9時 -
CRI(日本語)
周波数:7.320 / 9.570 MHz
おすすめ時間:夜19〜22時
冬(12〜2月)
-
RFI(英語)
周波数:7.370 / 9.590 MHz
おすすめ時間:深夜0〜3時 -
ラジオ・オーストラリア(英語)
周波数:9.580 / 15.505 MHz
おすすめ時間:午前8〜13時 -
KBS World Radio(日本語)
周波数:9.775 MHz
おすすめ時間:夜20〜23時