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アマチュア無線で免許されているアマチュア業務とは『金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務』です。それに加えて、近年では消防団や自治会での使用も一部緩和されています(営利・商用目的を除く)。
これらアマチュア業務で行われる交信においては電波法の各種法令といったルールを必ず守り、マナーを尊重して運用しなければなりません。
法に反した使い方をしてしまうと不法無線局となり、電波法違反で検挙され、無線従事者として業務停止や免許取り消しなどの行政処分、さらに罰金といった刑事処分を課せられます。
では、具体的にアマチュア無線で何をやってはいけないのか見ていきましょう。
アマチュア無線でしてはいけないこと
アマチュア無線では主に下記のような行為が禁止されています。
1、無資格、無免許での運用
アマチュア無線は従事者免許証と無線局免許状の二つがなければ運用できません。無資格および無免許で使うと罰せられる大変厳しい無線制度です(ただし、ゲストオペレーター制度や令和5年3月改正の『アマチュア無線の交信体験制度(体験運用)』などの場合は、この限りではありません)。
周波数や送信出力は運用者の従事者免許の資格に応じて免許されている範囲内での運用でなければならず、オーバーパワーや周波数の逸脱も電波法違反となります。
- 許可されていない帯域での通信: アマチュア無線は級によって使用できる周波数帯域が違い、許可されていない帯域外での通信は違反です。例えば、2アマ以上に免許される10MHz帯にて3アマが交信すると違反です。また、アマチュアバンドからの周波数の逸脱(“オフバンド”と言います)、さらに業務無線帯域、警察や消防といった官庁の重要通信の帯域で電波を出してしまうと重大な電波妨害となります。
- 送信出力の超過: アマチュア無線では、送信機の出力にも級ごとに制限され、逸脱した場合も違反です。
余談ですが、過去には有名なグリコ森永事件の犯人グループと見られる者たちがアマチュア無線を使い、犯罪計画の交信を行っていたことが知られています。同交信はHFの7MHz帯域の、正規に許可されたアマチュア無線局の帯域外を使う「オフバンド通信」で行われ、正規のコールサインを名乗らず、「玉三郎」、「怪人21面相」などと名乗っての通信でした。
これらの法令違反が総合通信局の電波監視で発見された場合には摘発され、行政処分や1年以下の懲役または100万円以下の罰金といった刑事処分を課せられます。
局免失効状態でアマチュア無線機を設置し摘発!→女性検事『電波出したろ?』→被告『出してない!』→『くっ…一度くらい電源は入れたことあるよね?』→『…かも』→略式裁判で有罪確定
2、アマチュア業務以外の通信
アマチュア無線がアマチュア業務以外で違法に利用される例としては、やはり営利を伴う商業利用の交信が挙げられます。しかし、アマチュア無線で認められている行為は非営利のアマチュア業務のみです。アマチュア業務以外の一般的な企業の営利に絡む通信はできません。
なお、令和3年度、総務省により定義が明確化され、町内会での防災目的での利用や、消防団等、社会貢献活動等でのアマチュア無線の活用が認められました。ただし、引き続き営利目的での利用は認められません。
一方、人命の救助や現行犯人の逮捕などに関する非常通信に限っては、アマチュア無線を例外的に使用できます。ただし、非常通信を目的としてアマチュア無線局の開設はできません。非常通信については、総務省が2014年10月24日に「アマチュア局による非常通信の考え方」を公表しており、その中で”非常通信はアマチュア局の柔軟な判断とボランティア精神によって行っても良い”と明確に見解を表明していますのでご参考まで。
3、虚偽の通信
アマチュア無線のみならず、電波法では無線通信で『自己若しくは他人に利益を与え、又は他人に損害を加える目的で』虚偽の通信を行った者は処罰されます。
第百六条 自己若しくは他人に利益を与え、又は他人に損害を加える目的で、無線設備又は第百条第一項第一号の通信設備によつて虚偽の通信を発した者は、三年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
平成10年1月、三重県桑名郡多度町の多度山で、何者かがアマチュア無線を使い「にせ非常通信」を出して、警察や消防などのヘリコプター3機、数百人の捜索隊を出動させるという悪質な事件が発生しました。
アマチュア無線を悪用し、偽りの非常通信などを行えば、言うまでもなく警察や消防に対する偽計業務妨害にもなりかねません。
また、電波法では虚偽の遭難通信も許されません。
第百六条 2 船舶遭難又は航空機遭難の事実がないのに、無線設備によつて遭難通信を発した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
自己若しくは他人に利益を与え、又は他人に損害を加える目的以外のウソなら可能であるかについては、不勉強でわかりません。
4、わいせつな通信
電波法108条にて明記されているのが『わいせつな通信の禁止』です。秩序を保つための法令と言えますが、気になる「わいせつの定義」は以下の記事にて、政府答弁を参考の上で個人の感想を述べました。
5、憲法・政府の暴力的破壊を主張する通信を発する行為
電波法第107条によって、通信秩序を維持するため、憲法・政府の暴力的破壊を主張する通信内容をアマチュア無線で行うことはできません。ではそれ以外の犯罪的な内容の交信はできるのでしょうか?例の如く不勉強でわかりません。
6、暗号での通信
電波法第58条によって、アマチュア無線では暗号を使った通信ができません。総務省ではその理由を『アマチュア業務に通信内容を秘匿する必要がないことおよび通信秩序の維持』のためとしています。
暗語使用の禁止・通信に秘匿性を与える機能について
暗語使用の禁止について
アマチュア局は、多数の免許人で周波数を共用してお互いに譲り合いながら電波を使用して国内外の他者との通信を行うことを目的とするものであるなど、その開設の目的から、通信内容を秘匿する必要がなく、通信秩序の維持のための必要から、「アマチュア無線局の行う通信には、暗語※を使用してはならない。」(電波法第58条)とされております。
※暗語とは、通信内容を第三者に分からないようにするため、通信当事者間で定めた仕方により、通信内容を秘匿したものをいいます。
出典 総合通信局 https://www.tele.soumu.go.jp/j/others/amateur/info/confidentiality/
ただ、いわゆるQ符号は暗号ではなく略号であり、使用できるとの政府の見解です。
○政府委員(網島毅君) 実験無線局及びアマチユア無線局は暗号は扱つてはなりませんが略号は扱つても構わないと思います。殊に国際條約の規定によつて決められてQコードというようなものは使用さしてもいいと考えております。尚一般無線局には暗号は使つても差支えありません。
出典 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=100714847X01119500302&spkNum=100#s100
アマチュア局や業務局で使われているQ符号は広く公にされているものですし、交信内容を秘匿することが目的ではないということですね。
また、アマチュア無線以外の『一般無線局』は暗号を使った交信は差し支えないそうです。実際に業務無線でも暗号は一般的ですし、消防無線では暗号を使って交信しますし、警察無線ではセンターポール露出などという暗号を使って指令を出していたようです。暗号というより通話コードと言うようです。
7、他人に依頼された通信
電波法に基づき無線局の運用方法について定めることを目的とする総務省令である『無線局運用規則』の第259条により、アマチュア無線では他人に依頼された通信はできません。
ただし、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合における、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために必要な通報及び人工衛星に開設するアマチュア局の送信する通報は、この限りではないとなっています。
つまり、いわゆる『非常通信』において、被災者など他人に救助の通報を依頼された場合、あるいは人工衛星に開設するアマチュア局の送信する通報は、何の問題もなく行えるということです。
アマチュア無線でやってはいけないことのまとめ
このように、アマチュア無線は電波法によって各種の禁止行為が定められています。これら不法無線局を取り締まっているのが、総務省総合通信局です。総合通信局による取り締まりについては以下の記事で解説しています。