アマチュア無線好きのみなはん、びっくりするようなアニメあったの知っとります?
当サイトでも「アマチュア無線の出るマンガやアニメ」っちゅうテーマでいろいろ紹介してきたけど、今回見つけたのは、まさかの80年代のアニメや!
しかも、リアリティのある描写がアマチュア無線家の間で広く知られている「ちびまる子ちゃん」よりも、アマチュア無線を細かく描いとるっちゅうのに、界隈ではほとんど話題にもなっとらん不遇の作品……。
『ちびまる子ちゃん』も、もちろんええんですよ。
今日は #世界アマチュア無線の日
アマチュア無線は世界が広がるから、とっても楽しいよ😄#ちびまる子ちゃん #4月18日 pic.twitter.com/wDpImFj4Fa— ちびまる子ちゃん【公式】 (@tweet_maruko) April 18, 2023
で、そのアニメが、1983年から85年にかけてTBS系で放映された『ミームいろいろ夢の旅』ちゅう作品なんや。
全127話あるこの科学教養アニメの中で、1984年9月2日放映の第73話『宇宙からのメッセージ!?』に、しっかりとアマチュア無線が登場しとるんや。
あくまで本編の中の一編なのが残念やけどな。
「ミームいろいろ夢の旅」っちゅうたら、一時期ネットでも話題になったの知らん? 「福島第一原子力発電所」を名指しで取り上げて、原発事故の恐ろしさを事細かに紹介しとる『予言アニメ』として注目されとったりするんやけどな。
実は、それだけやのうて、現代のIT社会を先取りしたかのような描写もめっちゃあるんよね。
それもそのはず、このアニメのメインスポンサーが、当時の通信インフラを支えとった公共企業体やったからや! せやから、通信技術に関するエピソードもガチでしっかりしとるし、アマチュア無線の描写もリアルやったんやろな。
けどなぁ、こんだけ詳しく描かれとるのに界隈ではほぼスルー状態やったっちゅうのが、なんとももったいない話。
科学教養アニメっちゅうジャンルは、非科学的なワイと違って、科学的な無線家さんにはピッタリハマると思うんやけどな。
再放送もあんまりされへんかったし、知っとる人自体がめっちゃ少ないんかな?
せやけど、これはもう一回発掘されるべき、数少ない「アニメでアマチュア無線を描いた話」なんやで!
アマチュア無線の歴史を振り返るうえでも、こういう過去の作品に注目するのはおもろいしな。
安心したってや。2025年現在、Amazonプライム他、有料のネット配信で視聴可能やで!
せっかくやから、この機会に『ミームいろいろ夢の旅』の73話をチェックしてみて、どんなふうにアマチュア無線が描かれとるか確かめてみるのもええんちゃう?
なお「ミームいろいろ夢の旅」の第73話のご紹介では各場面においてアマチュア無線がどのように描かれているか、考察および批評の上で読者に伝えるために必要であることから、出典を明記したうえで、同作品から静止画像数点について、著作権法上に基づく「引用」を行いました。著作権者様におかれましては引用について問題がありましたら、ご連絡ください。
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「ミームいろいろ夢の旅」とは?

40年前の日本のアニメで描かれた”インターネット”では人々がすでにパソコンを使い、ショッピングやテレワークをして、リモート新年会を開催しとったんや!画像の出典 日本アニメーション公式サイト
このアニメ、1983年から85年にかけてTBS系で放映されてたんやけど、メインスポンサーがなんと当時の電電公社(今のNTT)やったんや!せやから、今のインターネットの前身になる『INSネット(ISDNに準じた公衆交換電話網)』を普及させる戦略的目標もあったらしい。これだけ聞いても時代の先取り感めちゃすごいな。
2期に分かれてて、最初の『大谷兄妹編』では、未来社会の通信技術を兄妹がミームっちゅう電子の妖精と一緒にシミュレーションしていくっていう、まあまあ地味めなストーリー。

第2シーズンのキャラクターたち全員集合やで。第1シーズンも面白かったけれど、さらにコメディタッチになり、冒険ゴッコの魅力がアップ。彼らは「科学探偵団」として、普段は地元のさくら町を中心に科学的疑問を調査、解決してくんやで。ピンクのスカートの少女と、メガネの少年が”ハム”なんや。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
ほんで、第51話からは『科学探偵団編』になって、こっから色調がカラフルになって、ストーリーも冒険活劇風にガラッと変わる。舞台は『桜町』っていうINSのモニター地区。
そこで描かれる暮らしが、まさに今のIT社会そのものやねん。
パソコン使ってネットバンキング、オンラインショッピング ・在宅勤務(テレワーク) ・在宅学習 ・テレビ電話 ・動画視聴、オンライン対戦ゲーム(将棋からシューティングまで!)
あの・・どう思う?これ、80年代のアニメの話やで!?めっちゃ先見の明ありすぎてビビるのワイだけ?
せやけど、時代が早すぎたんか、パソコンがまだ一家に一台しかないから、パパの仕事やらママのダイエット動画鑑賞で子どもたちが使われへんくなってまうんよ。そこで彼らは『自分たち専用のパソコン』を組み立てるんや。そして、そこに現れたんが・・・・・。
ほんで、オンラインで活動するときのハンドルネームが『MEME401』やねんけど、これもまた興味深い。MIU404ではないで。
『MEME』はもちろん“ミーム”のことやろうけど、実際、このアニメが放送されてたのが1980年代で、NECのパソコン通信サービス『PC-VAN』が始まったんが1986年。
まあ、HTTPステータスコードの実用化は89年からやから、“認証失敗エラー”を表すコード401と一致していても、ただの偶然やと思うんやがな。
まあ、もしそうやったらめっちゃセンスあるわ。
アマチュア無線技士の国家資格を持つ少年と少女がアニメで描かれたのは本作が初では?
1エリアのどこか。サトルら「桜町科学探偵団」のメンバーは、空きビルのオーナーさんが「テナント決まるまでならええよ」っちゅうことで、元ゲームセンターの地下を秘密基地にしとる。
博士くんが作った自作パソコン「レインボー」とか、ロボットのピコとかを駆使して、科学調査に熱中しとるメカ好きの子らやねん。

薬師寺ひろ子くん(JS1MEN)。武くんは”ハム”と聞いて、お肉のハムを想像する安定のコメディリリーフやから安心してや。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
ほんで博士くんと薬師寺ひろ子くん(JS1MEN)は、なんとアマチュア無線技士の国家資格持っとる凄腕の無線従事者や!
今日は、日本の上空を2日にわたって通過するスペースシャトルの宇宙飛行士から、日本のハム向けに送信されるメッセージを受信しようと、屋上で空中線の調整中。
「CQCQ、こちらはJS1MEN。どなたか応答願います」
HF用の八木アンテナの調整が終わって、セットアップされた無線機の前にみんなが集まる。サトルら、もうドキドキやで!
えっ、この周波数は!?
ひろ子くんが明瞭なCQに対し、すぐに応答が。しかも相手は、東京よりはるか南の沖縄の青い海に浮かんだ小船の少年やった!
これには同じく従事者のちびまる子ちゃんや永山くんもびっくりやな……(たまちゃんもだぞ)。

14MHzでの交信!通信士さん、やったな新記録だ!(コンタクト)この無線交信の表現がおもろいねん。「崖の上のポニョ」では、アンテナの両側面から電流みたいに電波が飛んどったけど、今作ではアンテナから円が広がる感じになっとる。。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
しかも、彼女らの使う周波数帯域はHF帯の14MHz(20mバンド)やで!電離層を利用して世界中と交信できるHF帯の中でも、14MHzは安定性抜群で、DXペディション(遠距離通信)でも人気のメインバンドや。
実は14MHzは、電波法で4アマ・3アマには免許されへんねん。
つまり、ひろ子くんも、交信相手の沖縄の少年も、”上級ハム”の2アマもしくは1アマっちゅうことや!(アマチュア無線ガチ勢小学生すぎるやろ……)
ちなみに『崖の上のポニョ』では50MHz、『釣りバカたち(幻の怪大岩魚アカブチ)』では7MHzと、結構低めのバンドで運用されとるな。
上級ハムの試験ってめっちゃ難しいねんで。2級やったら高校物理レベル、1級なら理工系短大レベル。しかも昔はモールスの実技試験もあったんや。
指定試験機関である日本無線協会によれば「1981年当初よりマークシート」とはいえ、上級アマでは2005年の廃止までモールスの実技試験も実施され、小学生で上級ハムに合格すると、新聞の地方版を飾る時代やったんや。
1996年5月20日の朝日新聞には、三重県四日市市の小学4年生(当時9歳7ヶ月)が1アマに合格したって記事が載っとった。それまでは12歳3ヶ月が最年少記録やったのに、一気に塗り替えたんやで。
……ともかく、ひろ子くんのオペレートはめっちゃ手慣れとるな。
沖縄の次に、今度は北海道の牧場から応答が!北海道や沖縄と交信とか、HF無線の真髄やん!

少年ハムのシャツに”JA-8″の文字。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
しかも、牛乳飲みながら無線しとる少年のセーターには『JA-8』の文字!こらまた細かいとこまでこだわっとるな(笑)
『JA』は日本のコールサインで、”8″は北海道のエリアナンバーや。
ちなみに、昔札幌にあった「ハドソン」ってゲーム会社(コナミに買収されて消滅)は、もともとハムショップ「CQハドソン」やってん。そのマスコットキャラ”ハチスケ”も、この『JA8』が由来やったらしいで!
大切なことはミームが教えてくれたんや
──おっと、紹介が遅れたわ。
この科学探偵団の子らを優しく、ときに厳しく導いてくれる存在が、彼ら子どもたちのメンターであり、昭和のグーグルでパソコンの中に住む妖精「ミーム」や!

アマビエちゃうで。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
CVは、キテレツくんや一休さんの声でお馴染みの故・藤田淑子さん。
ミームこそが本作の真の主人公やで!
まさに、Xファイルで言うところの”機械の中のゴースト”ってとこか?まさかの電波りようこみたいな妖精やったりしてな!?

画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
「HAM(ハム)の名前の由来、知っとる? “amateur” の頭のAMをとったんやけど、それだけやと発音しにくいからHを足して“HAM”になったんやで~」
まぁ、実は由来には諸説あって、実のところHAMの由来については諸説あり、どの考察が正しいか不明なんや。
とにかく、ミームはアマチュア無線の成り立ちからプロの業務とアマチュア業務との違い、電離層のこと、アマチュア無線が災害時に非常通信で役立つこと、そしてアマチュア無線を扱うには資格が必要であることなど、めっちゃ大事なポイントを子どもたちに教えてくれるんや。
電波はどうやって世界中とつながるの?
ミームはさらに説明を続ける。
「電波がどないして世界中に届くかわかる? それはな、電離層のおかげなんや!」
「電離層?」
「せや!空の上には電波を跳ね返してくれる層があるんや。これを使うことで、遠くの国とも話せるんやで!」
また、ミームは電離層の説明において電離層に電波を反射させることで世界中と交信ができることや、宇宙空間のアマチュア衛星(オスカー10号)を利用した交信方法を詳しく解説するんや。
「衛星に向けて電波飛ばしても、電離層ではね返されるんちゃう?」と、サトルも実にええ疑問をぶつけたで!
「おいでなすった」
ミームはニヤリと笑って続けるで。
「実は、周波数によっては電離層を突き抜けるんや!だから、アマチュア衛星(オスカー10号みたいなやつ)と交信できるんやで!」
サトルくんたちもびっくりしとるで。
災害時におけるアマチュア無線の非常通信を描いたアニメ
アマチュア無線の大切な役割
けど、アマチュア無線は楽しいだけやないのは皆さんもご承知の通り。
ミームの表情がちょっと真剣になる場面が、『災害とアマチュア無線』の説明。
たとえば、1983年5月26日に起こったM7.7の日本海中部地震。この時、建物の倒壊で亡くなった人もおったけど、それよりも大きな被害を出したんは津波やった。秋田、青森、北海道で合計100人の人が津波にのまれてしまったんや……。

ミームの中で興味深いのは被災者がアマチュア無線で非常通信を行っている様子。『オーエスオー、オーエスオー、秋田沖に津波発生・・』と無線電話で発しとるで。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
「アマチュア無線は被災地の情報を伝えるのに役立つ」
サトルくんらは、改めてアマチュア無線の凄さを実感するんやね。
余談やけど、100人の死者のうち、釣り人が18名やったことから、この日本海中部地震を釣り人の視線から被害調査をしてゆくドキュメンタリー的マンガが、矢口高雄氏の『激濤 Magnitude 7.7』なんや。
宇宙からのメッセージを受信
そしてついに夜8時。スペースシャトルが日本上空を通過する時間が来たで。受信のチャンスや。

博士くんが周波数をVHF帯の144MHzに合わせ、みんなが固唾を呑んで見守る中、シャトルのクルーからのCQ呼び出しの第一声が聞こえてきました。おおっ!画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
当サイトでも解説しとるけど、ISSやスペースシャトルなど、宇宙空間に滞在する宇宙飛行士たちと地球上のハムとが交信できるチャンスがあるんや。
日本では事前に取り決められたスクールコンタクトとして、事前に選ばれた主に小中学校などの児童生徒が対象や。
せやから、一般のハムは交信の対象外やけどが、もちろん彼らの交信を傍受するのは誰でもOKやで!
妨害電波の怪異が発生!フォックスハントで発信源探査を開始
せやけど、喜んだんもつかの間やった。
よりにもよって、なんも変調されてへん信号の発射による妨害が発生してしもたんや。宇宙からのメッセージが潰されてもうた。
「誰かがシャトルと同じ周波数で電波を発信しとるわ!」とミーム。
みんなが楽しみにしとったことを台無しにしようとする、心ない荒らし行為。ネトゲでもリアルでも、こういう悪質な妨害するやつ、おるよな。みんながっかりや。
でもな、ロシア軍の無線局に面白半分でアニメソングとか江南スタイル流すのはやめたほうがええで…。
ところが、翌日になっても妨害電波は発射されたまま。シャトルのメッセージを受信するチャンスは今夜しかない。
ほんなら、この妨害犯を特定して、なんとか停波させなあかん!そう意気込む彼ら。

フォックスハンティングによる発信源探索の解説も丁寧にミームが教えてくれます。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
ミームは「”フォックスハンティング”で電波の発信源を突き止められるで」と言い、キツネ狩りのやり方をみんなにレクチャーしてヒントを与える。秘密基地で指揮を執るのはミームや。
ひろ子班は、サトル、妹のマリ、武の4人。このメンバーで、探査装置を持ち、金儲けのためやのうて、ただただ無線技術への興味から自己訓練、通信、技術的研究いう、ちゃんとしたアマチュア業務の目的で妨害電波の探査に”出動”するっちゅうわけや。
そして彼ら科学探偵団(未来少年じゃないほうのコナンのような校外活動を彼らは普段からしとるで)は無線従事者のひろ子らの班と、同じく博士らの班の二手に分かれ探索を開始。

さっそく屋上に上り、探索を開始するひろ子班。先発の博士班は丘の上の公園方面から攻めます。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
電波の探索を続けるうちに、ついにあるマンションにたどり着いたんやけど、そこで彼らは”容疑者”の同級生に対して、とんでもない行動に出てもうた。
正義の暴走と偏見からの誤認逮捕
どうやらそのマンションには、陰気な感じの同級生、イヤミくん宅があるらしい。
サトルと武はピンときた。「あいつや…!」っちゅうわけや。
サトルはイヤミくんの家のドアをぶち破って乱入。しかも、イヤミくんが昔トラブルを起こしたことがあるいうだけで、無線機やアンテナの証拠もないのに、「陰気臭くて胡散臭い」って理由だけで、彼を締め上げてしもたんや。
この描写、なんかへの皮肉やとしたら、かなり鋭いとこ突いとるな…って思うのワイだけやろか。
ひろ子くんは、早まった行動をした二人を諌めるけど、サトルと武は納得いかん様子。
しかし、ひろ子くんの言うとおり、イヤミくんの家には無線機はなかった。つまり、これは完全にサトルと武の勇み足による”誤認逮捕”や。
うさんくさいっちゅうだけで無実の同級生をシメる正義の暴走や。
言うまでもなく、たとえ正規の無線従事者の資格を持っとったとしても、不法無線局に対して「不法な電波を発射するな!」って直接強制する権限はないんや。不法な電波を見つけたら、試験でも何回も出てきたように、「電波法第80条第2号の規定に基づいて総務大臣へ報告」するしかないわな。
見つけたからってヤサ(家)に乗り込んで、妨害電波の主を脅したり暴力振るったりするなんて、完全にアウトや。
無線でイタズラしとった奴の家にダンプの運転手が乗り込んできて、屋根のモビホ折られたとか、「いや、折ってないで。同軸抜いただけやし直るんや」とか、ようわからん話も聞くけどな。
ともかく、彼らも本職の総合通信局(当時は電波監理局)と同じく、司法警察権がない。
せやからこそ、”電波の発信源を突き止める”という探究心自体はええとしても、”妨害電波を強制的な手段で停波させる”っちゅう危うい行為は、まさに一部のフォックスハンターが陥る”誤った正義”そのものやと描写されてるところは見逃せんな。
余談やけど、今回の脚本はアニメやドラマの脚本でおなじみの一色伸幸さんや。この”アマチュア無線とフォックスハント”の話は、一色伸幸さんが脚本&原作を手掛けた映画『七人のおたく』でも描かれとるんやで。
ほんまこのエピソード、なかなか考えさせられる内容やな。フォックスハンティング(電波の発信源を探す遊び)を題材にしつつ、「正義感の暴走」みたいなテーマが入ってるのが面白い。
高層マンションに苦戦
ともかく、誤認の原因はどうも乱立しとる高層マンションにあるらしいわ。科学探偵団は電波の伝搬特性にかく乱されてもうて、えらい苦戦しとるんや。
ここでみんな、ミームが冒頭で解説しとった電波伝搬特性を思い出してみ?
せやせや、それがしっかり伏線になって、めっちゃええ感じに回収されていくねん。
この展開、ほんま脱帽やで。まるでシナリオライターの教科書みたいや!
ほんでな、薬師寺ひろ子はアマチュア無線技士の名にかけて、絶対にあきらめへん! 少女は今、真実を求めて探査を再開するんや。
かっこええやろ? アマチュア無線技士の国家資格持っとる少女が、その知識と技術をフル活用して大活躍するアニメとか、おそらくこれしかないんちゃうか?
そんなん言うたら、また大洗町方面から噛みつかれそうやけどな(笑)

画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
ほんで、ひろ子くんはマンションの前に立って、建物をパラボラアンテナみたいに使うことで、一方向の電波だけを受信する作戦を立案。これで捜索範囲をバシッと絞り込むんや!
これにはミームも感心しきり。そして、探偵団はマンションの一棟一棟をしらみつぶしに探索や!
ラジオライフも便利やけど、こういうアニメもめっちゃ役に立つなぁ……って、お前、何の電波探っとんねん? そ、そりゃGCIですから…。おいおい(笑)
ついに電波の発信源を特定
ほんでついに、古びた一軒家にたどり着いて、屋根にアンテナ確認! 「これはいけるで!」と確信する探偵団。せやけど、表札見てびっくり仰天。
なんと、前の回でMEME401に偽SOSをパソコン経由で送りつけ、騒ぎを起こしたあのばあちゃん、矢島さわさんの家やないかい!!
さっきまで無実の同級生をシメ上げとったサトルやけど、「今度こそ、とっちめたるで!」と正義に燃えとる。
しかし、インターホン押しても返答なし。しかも郵便受けに新聞がたまりまくっとる……。
「ま、まさか……」と戦慄する探偵団。地方公務員や近所の人らが集まって、玄関から突入! そこで彼らが見たもんは……!? っていう、クライマックスへ突入や!

というわけで、わかる人にはわかる結末となっております。衝撃の結末は実際に見てください。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
ともかくやな、JARL(日本アマチュア無線連盟)でも「無変調キャリアの発射にご注意ください」って注意喚起しとるけど、名も知らん局長の生活音丸聞こえとか、家族との会話がダダ漏れ状態で「チャンネルはそのまま! 波よ聞いてくれ!君の名は!」って言われても、聞く方も気まずいんですわ(笑)
かの件では長時間にわたる433MHz(メインチャンネル) 無変調により、総通の電波探索車が出動し、免許人は厳重注意されたって話やで。
こういうハレンチなオンエアをやらかすコミュニティFM局、たまにおるよなぁ……。
こういう場合は、まさに今回のサトルくんらのように地元の良き社会人ハム有志がフォックスハント(電波発信源探し)を決行! 屋根のアンテナを確認して家庭訪問、ピンポンを鳴らすんや。
せやけど、これが恋の無変調……いや、故意の無変調で、警察や消防の無線など重要通信を妨害するような悪質行為の場合はな、総合通信局のセンサ局が一発で発信源を探知・特定して、アホな妨害犯は行政処分と刑事処分を受けるハメになるんやで。
ほんで、「あたしもボケたのかしら?」からの今回の事件の張本人、矢島のおばあちゃんのシャック(無線機の置き場)にて、ついにスペースシャトルからのCQ(呼びかけ)を傍受! ばあちゃんと科学探偵団は、宇宙からのメッセージに大歓声や!
ちなみに筆者も、144MHz帯でダンプの運転手らによる爽やかな会話が続いとる最中、いきなりISS(国際宇宙ステーション)におる宇宙飛行士の英語の声が59で聞こえたことあるんやけど、あれはほんま神秘的で感動したわ……。
そんで今回の騒動でアマチュア無線に魅了されたサトルも、「アマチュア無線の試験受けるわ!」と高らかに宣言! せやけど、それを聞いた妹のマリが『中学校の理科レベルなんだが兄者大丈夫なのか?』と痛烈なツッコミ。これに探偵団一同どっと笑い、大団円や!
総評
さて、ワイの下手くそな紹介で恐縮やけど、どうやった?
マチュア無線の成り立ちから電波と電離層の解説、従事者免許、非常通信、アマチュア局の実務としてのHF帯オペレート、フォックスハント、そして表題の宇宙のスペースシャトルからの通信まで、たった20分でテンポ良くまとめられとるっちゅうのがわかったやろか?
いやあ、起承転結のはっきりした物語で実に面白かったで!ほんま、これほど濃い内容のアニメ、今の時代にはなかなかお目にかかれへんで。
せやけど、ホンマ不遇なアニメやな。こんなに先進的でアマチュア無線どころか、80年代のアニメでインターネットの描写も細かいのに、なんであまり話題にされへんかったんか、不思議やで。
やっぱり全体を通して通信技術の歴史と発展が比較的多く描かれてるのは、電電公社(現・NTT)という通信会社がスポンサーやったからこそやろな。企業イメージの向上と技術教育を兼ねとるから、まさに面目躍如や。
人類の最初期の通信技術とも言えるアマチュア無線が取り上げられたのも、自然な流れやったんやろうね。
これがもしさらに掘り下げられてたら、例えば主人公が中学・高校のアマチュア無線部員の少年少女で、未知の電波をフォックスハントするストーリーのアニメ映画……
そんなんが、もし80年代当時に作られとったら、タイトルは『Q・R・A / 貴局(きみ)のコールサイン(名)は。』とかになってたかもしれん。
なんかエロゲくさいタイトルやな…。
ともかく、現時点で間違いなくアマチュア無線をここまで詳しく描いた作品は、テレビアニメ史上でも『ミームいろいろ夢の旅』が随一やろ。
ただな、後の回でも博士とひろ子らがトランシーバーを使ってやりとりする場面があるんやけど、この73話での見事な上級ハムのオペレートを踏襲したとは思えんようなお粗末な運用描写があって、そこはちょっと残念やな。
とはいえ、80年代にこれだけ先見性のある通信技術の描写を盛り込んでたアニメがあったのはほんま驚愕。再評価の波、来るんちゃうか?
2025年1月現在、Amazon Prime Videoチャンネル内の月額払いのサブスクリプション、アニメタイムズまたはdアニメストア for Prime Videoにて配信中やで。すでにAmazonプライム会員で興味を持たれた方はぜひ加入の上で視聴したってや!
Amazonプライム会員になっていない方はこちらで以下から登録できるで!
電電公社が40年も前に作ったINS推しのテレビアニメを、今こうしてネット配信サービスで見られるっちゅうのは、なかなか感慨深いもんがあるなぁ。
ほんで、このアニメは当時の電電公社の通信回線普及を狙った広報戦略の一環やったわけやけど、もうひとつ見逃されへんポイントがあるんや。
それが、自宅でのテレワークが当たり前になってきた今、このアニメでは1985年の時点で、すでにその未来を予感させるシーンが随所に描かれてるっちゅうことや。
当時の「科学万博―つくば’85」ともタイアップしとって、「もし森鴎外の時代にINSとパソコンがあったら?」っちゅう仮定のもと、森鴎外がテレワークに勤しむ姿が描かれてるのも、なんとも興味深い。
さらには、パソコンとINS回線を使ってテレワークどころか『リモート新年会』までアニメの中で描かれてるねん。
そう、特に89話は必見やで。
大雪で外出できへんくなったサトルくんのパパ。ほんまやったら会社の新年会があるはずやったんやけど、急遽”INS新年会”に切り替えられることに。今で言う”リモート新年会”やな。
カメラ搭載のパソコン画面にはZoomみたいなビデオチャットが映し出されて、4人の同僚と顔を合わせるパパやけど、どうも浮かない表情。
そらそうや、上司や同僚に囃し立てられて、隠し芸の手品を披露するハメになるんやけど、そのネタがリモート向きやなかったんや……。
INS回線を介した新年会で、上司に隠し芸を披露させられる未来のサラリーマンの悲哀を予感させるこのエピソードは、なんと1984年12月23日に放映されとるんやで。
2020年7月には『クレヨンしんちゃん』でも「父ちゃんがテレワークだゾ」って回で、しんちゃんのパパ・野原ひろしの在宅勤務とテレビ会議の様子が描かれたけど、INS新年会のエピソードほどの悲哀はないかもしれへん。
ひろしも「今の時代、インターネットがあれば、どこにいても会社とつながれる」って言うてたけど、結局、仕事終わっても同僚とリモート新年会でつながり続ける羽目になるんやな。
そして、そこでもまた上司に隠し芸を披露させられる……。サラリーマンの悲哀を描いたアニメとしては、やっぱり『ミームいろいろ夢の旅』のほうがインパクト強いかもしれへんで。
「でも、そんな生活続けてたら不精になるかも?」っちゅう警告まで発してる本作。テレワークしてる皆さん、ドキッとせぇへん?
今こそ、おうちで子どもと一緒に見たい科学教養アニメやな。
ちなみに、この作品の監修は「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と呼ばれる糸川英夫氏や。

画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話 (C)日本アニメーション/TBS
せやから、日本のアニメでアマチュア無線を詳しく描いた作品といえば、『ちびまる子ちゃん』とか『崖の上のポニョ』とかがあるんやけど、『ミームいろいろ夢の旅』、も知っといてや!めっちゃオススメやで!
せやけど、科学的で進歩的なアマチュア無線の大手サイトが本作のような科学教養アニメに一切触れずに、お注射嫌いの非科学的なサイトが紹介するんは皮肉やなあ(笑)