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リアリティのある描写がアマチュア無線家の間で広く知られている『ちびまる子ちゃん』のエピソード『まる子、アマチュア無線にあこがれる』はすでに視聴済みでしょうか?
今日は #世界アマチュア無線の日
アマチュア無線は世界が広がるから、とっても楽しいよ😄#ちびまる子ちゃん #4月18日 pic.twitter.com/wDpImFj4Fa— ちびまる子ちゃん【公式】 (@tweet_maruko) April 18, 2023
当サイトでも「アマチュア無線の出るマンガやアニメ」としてご紹介済みですが、実は明らかに『ちびまる子ちゃん』以上に詳しくアマチュア無線が描かれていたにもかかわらず、界隈のほぼ誰も言及しなかった不遇な80年代のテレビアニメ作品があったのです。
それが1983年から85年にかけてTBS系で全127話にわたって放映された科学教養アニメ「ミームいろいろ夢の旅」の1984年9月2日放映の第73話『宇宙からのメッセージ!?』です。
参考サイト https://taiku2.suppa.jp/meme/story/me_houei.htm
本作は『福島第一原子力発電所』を名指しで紹介し、その構造と原発事故の恐ろしさを作中で詳細に紹介するなど、近年ネットで『恐ろしい予言アニメ』として話題にもなったテレビアニメですが、科学教養をテーマとしていることから、IT社会となった現代への強い予言性も豊富です。
それもそのはず、なんと本作のメインスポンサーはインターネットの前身となるINSネットを牽引してきた当時の公共企業体。では、詳しくご紹介していきましょう。
なお「ミームいろいろ夢の旅」の第73話のご紹介では各場面においてアマチュア無線がどのように描かれているか、考察および批評の上で読者に伝えるために必要であることから、出典を明記したうえで同作品から静止画像数点を著作権法上の引用を行いました。著作権者様におかれましては引用について問題がありましたら、ご連絡ください。
「ミームいろいろ夢の旅」とは?
『ミームいろいろ夢の旅』は日本アニメーション制作で、1980年代当時、現在のインターネット回線の前身となる『INSネット(国際規格のISDNに準じた公衆交換電話網)』を社会に普及させたい戦略的目標があった電電公社(現・NTT)の一社提供となっています。
2期編制となっており、第1話から第50話までの『大谷兄妹編』では大谷大助・さやかの兄妹が、INSの発達した近未来の世界を電子の妖精ミームと共にコンピューターでシミュレーションする姿が描かれます。
そして、2期となる第51話から最終話の第127話までの『科学探偵団編』では少し地味だった前期のストーリー性およびキャラクターの見直しが図られ、さらにポップでカラフルな色調と冒険活劇的展開が前面に押し出され、科学教養というテーマを大切にしながらも、より子どもが楽しめる娯楽作にブラッシュアップ。
『科学探偵団編』では、ついに”未来の技術”であったINS通信網のモニター地区に選ばれた「桜町(さくらまち)」に住む人々の暮らしが描かれます。通信端末のパソコンを使い、自宅にいながらのネットバンキングやオンラインショッピング、さらには在宅勤務(テレワーク)、在宅学習、テレビ電話、将棋からシューティングまで何でもあるオンライン対戦ゲームなど、現在では当たり前になった最先端の情報化社会が80年代年放映のアニメの中で、惜しみなく描かれます。
未来社会のIT技術を暮らしに取り入れ、豊かな生活を送る桜町の人々ですが、現代のようにパソコンは”一人に一台”ではなく、まだまだ”一家に一台”。
次第にパソコンはパパのお仕事、ママの”ダイエット動画チャンネル”視聴などで大人たちに占有されてしまいます。そこで彼ら子どもたちは”自分たち専用のパソコン”を組み立て。そして、そこに現れたのは・・・・・・。
なお、彼ら科学探偵団のオンライン上のハンドルネームはMEME401(MIU404ではありません)。1986年にNEC社が国内向けパソコン通信サービス「PC-VAN 」を開始しています。”MEME”は当然、”ミーム”。401はHTTPステータスコードの『アクセス権限がない場合やログイン認証に失敗した際のエラー』を表すものですが、それが由来でしょうか?しかし、このアニメは1980年代の作品。MEME401の名称の由来、詳しくは不明です。
アマチュア無線技士の国家資格を持つ少年と少女がアニメで描かれたのは本作が初では?
1エリアのどこか。サトルをはじめとする「桜町科学探偵団」のメンバーは、空きビルの寛容なオーナーの許可を得て「テナントが入るまで」という期間限定で地下にある元ゲームセンター跡が秘密基地。
彼らは普段、博士くんが作った自作パソコンの「レインボー」や、ロボットのピコなどを科学調査に使用するなど、メカに明るい子どもたち。
そして前述の博士くんと薬師寺ひろ子くん(JS1MEN)の2人がアマチュア無線技士の国家資格を取得している無線従事者です。
ひろ子くんと博士くんらは今日、日本の上空を2日にわたって通過するスペースシャトルの宇宙飛行士から日本のハムに向けて送信されるメッセージを受信しようと、屋上で空中線の調整中。
「CQCQ、こちらはJS1MEN。どなたか応答願います」
HF用の八木アンテナ調整を終え、セットアップされた無線機の前にみんなが集まり、サトルくんたちはどきどき。
えっ、この周波数は!?
ひろ子くんの明瞭なCQとコールサインが響くと、ほどなくして応答が。それは、東京からはるか南の沖縄の青い海に浮かんだ小船の少年からでした。これには同じく従事者のちびまる子ちゃんや永山くんもびっくりですな……(たまちゃんもだぞ)。
なんと彼女らの使う周波数帯域(バンド)はHF帯の14MHz(20mバンド)。電離層の利用で世界中と交信が出来るHF帯の中でも14MHzは抜群の安定性を持ち、DXペディションでもメインストリートとして人気。4アマ、3アマならば、誰しもが憧れを持っているバンドです。
そう、実はこの14MHz、電波法によって4アマおよび3アマには免許されません
すなわち、ひろ子くんならびにその交信相手の子らは”上級ハム”である2アマもしくは1アマということに……。
ちなみに『崖の上のポニョ』では50MHz、『釣りバカたち(幻の怪大岩魚アカブチ)』では7MHzと、それぞれの作品でもHFバンドでの運用となっています。
なお、ひろ子くんと博士くんが取得していると思われる上級ハムのうち、2級であれば高校物理レベル、1級であれば理工系短大レベル。
指定試験機関である日本無線協会によれば「1981年当初よりマークシートによる自動採点が取られている」とはいえ、上級アマでは2005年の廃止までモールスの実技試験も実施され、小学生で上級ハムに合格すると、新聞の地方版を飾る時代。
朝日新聞1996年5月20日版で三重県四日市市に住む小学4年生の男子児童が9歳7ヶ月で1アマに合格したと取り上げており、日本無線協会によれば、それまでは12歳3ヶ月が最年少だったが、大幅にその記録を塗り替えたとあります。
ともかく、彼女のオペレートは手馴れたもの。沖縄に続き、今度は北海道の牧場で搾りたてのミルクを飲む少年ハムが応答します。さすが北海道から沖縄、地球の裏側までを地でいくHFアマチュア無線の真髄を発揮。
ここで思わぬ演出に衝撃が。搾りたての牛乳を味わいながらトランシーバーでひろ子君と交信する少年のセーターには『JA-8』の文字。言うまでもなく『JA』は当時発給されていたまだ若い日本の国籍、そして”8″は北海道を意味するエリアナンバーです。細かい(笑)
余談ですが、札幌にかつて存在した有名なハドソンというゲーム会社(コナミに買収され消滅)は元々、小さなハムショップ「CQハドソン」でしたが、そのマスコットキャラクターはこのJA8にちなみ、”ハチスケ”としておなじみでした。
大切なことはミームが教えてくれた
おっと、紹介が遅れました。彼ら科学探偵団の少年少女たちを優しく、ときに厳しく導くのはパソコンの中に住む妖精、ミームです。
CVはキテレツくんや一休さんの声でお馴染みの故・藤田淑子さん。
彼ら子どもたちのメンターであり、昭和のグーグルです。ミームこそが本作の本当の主人公。Xファイルで言うところの機械の中のゴーストですか?電波りようこみたいな妖精!?
ミームはアマチュア無線の成り立ちからプロの業務とアマチュア業務との違い、電離層のこと、アマチュア無線が災害時に非常通信で役立つこと、そしてアマチュア無線を扱うには資格が必要であることなど、大切なことを子どもたちに教えてくれます。
そのHAM(ハム)の名称の由来も、丁寧に教えてくれます。ミームの説明によれば『amatureの最初の2文字をとってAMとしたが、それでは呼びにくいからHをつけて“HAM”とした』としています。ただ、実のところHAMの由来については諸説あり、どの考察が正しいか不明です。
また、ミームは電離層の説明において電離層に電波を反射させることで世界中と交信ができることや、宇宙空間のアマチュア衛星(オスカー10号)を利用した交信方法を詳しく解説。
ここでサトルくんが大変すばらしい質問をひとつ。
『衛星に向けて電波を発射しても、電離層ではね返るんじゃないの?』
もちろん、ミームはそんな質問が返ってくることは折り込み済み。さらに詳しく周波数の特性を解説してくれます。
ところで、初級ハムの国家試験の難易度は”中学校程度の理科”とのミームの解説に、サトルくんもまた『ちびまる子ちゃん』のまる子のように驚きを隠せませんでした。
災害時におけるアマチュア無線の非常通信を描いたアニメ
とくに、災害時にアマチュア無線が運用されているシーンのあるアニメといえば、崖の上のポニョがあります。
しかし、ミームも負けていません。何しろ、非常通信そのものを詳しく丁寧に解説してくれているのですから。
災害の事例で描かれる巨大地震と秋田沖の津波。これは1983年5月26日に発生したM7.7の日本海中部地震と思われます。
この地震による建物倒壊では死者4人、津波では秋田、青森、北海道で計100人の方々が犠牲となるなど、放映回の直近ではもっとも甚大な被害が出た国内最大の大地震です。
余談ですが、100人の死者のうち、釣り人が18名だったことから、この日本海中部地震を釣り人の視線から被害調査をしてゆくドキュメンタリー的マンガが、矢口高雄氏の『激濤 Magnitude 7.7』です。
宇宙からのメッセージを受信
そしてついに夜8時。スペースシャトルが日本上空を通過する時間です。受信のチャンスがやってきました。
当サイトでも解説していますが、ISSやスペースシャトルなど、宇宙空間に滞在する宇宙飛行士たちと地球上のハムとが交信できるチャンスがあります。日本では事前に取り決められたスクールコンタクトとして、事前に選ばれた主に小中学校などの児童生徒が対象となっており、一般のハムは交信の対象外ですが、もちろん彼らの交信を傍受するのはどなたでも可能。
妨害電波の怪異が発生!フォックスハントで発信源探査を開始
しかし、喜んだのもつかの間。よりによって、何者かの無変調信号の発射による妨害が発生。宇宙からのメッセージが潰されてしまいます。
「誰かがシャトルと同じ周波数で電波を発信しているんだわ」とミーム。
みんなが楽しみにしていることを台無しにしようとする心ない荒らし行為。ネトゲにもリアルにもいますよね。悪質な妨害行為にみんなはがっかりです。
ところが、翌日になっても妨害電波が発射されています。シャトルのメッセージ受信のチャンスは今夜しかない以上、妨害電波の発信者を特定し、停波させなければならないと彼らは意気込みます。
ミームは「”フォックスハンティング”で電波の発信源を突き止められる」と、キツネの狩り方をみんなに教示し、ヒントを与えます。
そして彼ら科学探偵団(未来少年じゃないほうのコナンのような校外活動を彼らは普段からしています)は無線従事者のひろ子らの班と、同じく博士らの班の二手に分かれ探索を開始。
秘密基地で指揮を執るのはミーム。ひろ子班はサトル、妹のマリ、武の4人。彼らは今、探査装置を抱え、金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究という実に正当なるアマチュア業務を目的として、妨害電波の探査に”出動”するわけです。
電波の探索を続け、ついにあるマンションにたどり着いた彼らですが、彼らは”容疑者”の同級生へとんでもない行動に出てしまいます。マンションには陰気な同級生男子のイヤミくん宅があるようで、サトルと武はピンときます。サトルはイヤミくん宅のドアをぶち破って上がりこみ、イヤミくんが以前に彼らとトラブルを起こした過去があり、無線機やアンテナなどの証拠がないにもかかわらず、陰気臭くて胡散臭いという理由だけで彼を締め上げてしまいます。
本作のこの描写は何かに対する皮肉なら鋭い描写と言わざるを得ません。
ひろ子くんは早まる彼らを諌めますが、サトルと武は納得できない様子です。しかし、ひろ子くんの言うとおり、イヤミくん宅に無線機はなし。今回はサトルと武の勇み足による完全な”誤認逮捕”です。うさん臭いというだけで無実の同級生をシメたサトルとタケシ。
言うまでもなく、たとえ正規の無線従事者の資格を所持していても、不法無線局に対して、不法な電波の発射を停止させる権限はありません。不法な電波を確認した場合に出来ることは、試験で何度も出てきたように「電波法第80条第2号の規定に基づいて総務大臣へ報告」のみ。発見してもヤサに乗り込んで妨害電波のヌシを脅したり暴力行為など論外。無線でいたずらしてた人の家にダンプの運転手が乗り込んできて、屋根のモビホ折られたとか、いや、折ってないよ、同軸抜いただけだから直るしお巡りさん帰ってよなど、よくわからない話も聞きます。
ともかく、彼らも本職の総合通信局(当時は電波監理局)と同じく、司法警察権がありません。したがって、電波の発信源を突き止める行為自体を純粋な探究心として描く一方で、”妨害電波を強制的な手段を以って停波させる”という危うい行為は、まさに一部のフォックスハンターによる”誤った正義”のようなものとして描写されているところも見逃せません。
余談ですが、今回の脚本はアニメやドラマの脚本でお馴染みの一色伸幸さん。この”アマチュア無線とフォックスハント”は一色伸幸さんが脚本および原作の映画『七人のおたく』でも描かれています。
ともかく、誤認の原因はどうやら乱立する高層マンションにあるようです。科学探偵団は電波の伝搬特性にかく乱されてしまい、苦汁を味わいます。ここで皆さんはミームが冒頭で解説した電波伝搬特性を思い出してください。その説明が、しっかり伏線となって回収されていく展開は脱帽です。シナリオライター専門学校で習う脚本の教科書のように鮮やかです。
そして、薬師寺ひろ子はアマチュア無線技士の名にかけて、あきらめません。少女は今、真実に向かって探査を再開します。かっこいい。アマチュア無線技士の国家資格を持つ少女がその知識と技術を存分に発揮して活躍するテレビアニメっておそらく本作だけではないでしょうか。そんなこと言うと、また大洗町方面から噛み付かれるぞ(笑)
ひろ子くんは自らがマンションの前に立ち、建物をパラボラアンテナ化することで一方向のみの電波を受信し、捜索範囲を的確に絞り込む作戦を立案。これにはミームも感心。そして彼らはマンションの一棟一棟をしらみつぶしに探索してゆくのです。
ラジオライフも役立つけど、こういうアニメも意外と役に立つわぁ……って、オマエはなんの電波を探ってんだ?そ、そりゃGCIですから。
ついに電波の発信源を特定
そして、古びた一軒家にたどり着き、屋根にアンテナを確認したひろ子くんらはフォックスハンティングの勝利を確信。しかし、民家の表札を見てびっくり。なんと、以前の回で彼ら(MEME401)に偽SOSを電話回線を介してパソコンで送り、騒ぎを起こしたあのおばあちゃん、矢島さわさん宅だったのです。
さきほど無実の同級生を誤認でシメ上げておきながら「今度こそとっちめてやる」と正義に燃えるサトルですが、呼び出しブザーを押しても返答なし。しかし、郵便受けに新聞が溜まっていることを不審に思った彼らは「まさか……」と戦慄。地方公務員や近所の人らが集まり、玄関から突入した彼らがそこで見たものは?というあたりで物語はクライマックスへ。
ともかく、悪意のない無変調電波の発射に関しては、実際にJARLでも「無変調キャリアの発射にご注意ください」として注意喚起していますが、名も知らぬ局長のあけっぴろげな生活音、家族との会話がチャンネルはそのままで波よ聞いてくれって言われても、聞く方も気まずいんですわ。いるんだよねえ、こういうハレンチなオンエアを敢行するコミニュティFM局。
こういう場合は地元の良き社会人たるハム有志がまさにフォックスハントで発信源を探査し、屋根のアンテナを確認して家庭訪問、ピンポンを鳴らすわけです。もっとも、これが恋の無変調、もとい故意の無変調であった場合は総合通信局によって発信源がいとも簡単に探知されてアホな妨害犯は行政処分を受けるわけです。
「あたしもボケたのかしら?」からの、矢島のおばあちゃんのシャックにて、無事にスペースシャトルからのCQを傍受したおばあちゃんと科学探偵団は宇宙からのメッセージに歓声を挙げます。筆者も、それまでダンプの運転手らによる爽やかな会話が続く144MHz帯で、突如宇宙空間のISSに滞在する宇宙飛行士の英語の声がほんの数分間だけ聞こえてきた体験は神秘的で感動しました。
そして今回の騒動でアマチュア無線に感銘を受けたサトルも国試を受けることを高らかに宣言しますが、妹のマリに『中学校の理科レベルなんだが兄者大丈夫なのか?』と突っ込まれ、一同どっと笑い、大団円です。
総評
いやあ、起承転結のはっきりした物語で実に面白かった!アマチュア無線の成り立ちから電波と電離層解説、HF帯による実際のオペレート、従事者免許、非常通信、フォックスハント、そして表題の宇宙のスペースシャトルからの通信が20分にテンポ良くまとめられていました。
やはり電電公社という通信会社がスポンサーですので、全体を通して通信技術の歴史と発展が比較的多く描かれているのが本作の特徴ですから、その人類の最初期の通信技術とも言えるアマチュア無線が取り上げられたのは、自然な流れだったのではないでしょうか。
このような”未知の電波をフォックスハントで探る”テーマを主軸にして、さらに掘り下げて主人公を中学・高校のアマチュア無線部員の少年少女らにしたアニメ映画なんて80年代当時にもしあったら、タイトルは『Q・R・A / 貴局(きみ)のコールサイン(名)は。』になっていたでしょうね。エロゲみてえなタイトルをつけるんじゃない(笑)
ともかく、現時点で間違いなく、アマチュア無線をここまで詳しく描いた作品はテレビアニメ史上でも本作が随一。非常に興味深く楽しめました。ただ、後発の回でも博士とひろ子らがトランシーバーを使い、やりとりする場面があるのですが、この73話での見事な上級ハムのオペレートを踏襲したとは思えないようなお粗末な運用描写があり、少し残念です。これは実際に皆さんで視聴していただいて、確認していただきたく思います。え?見られるの?
はい!この作品は2022年8月現在、Amazon Prime Videoチャンネル内で追加の支払いにより利用できる「dアニメストア for Prime Video」にて配信されておりますので、すでにAmazonプライム会員であれば、NTTドコモが提供するDアニメストアの月額440円(税込み)の定額料金で全話視聴ができます。興味を持たれた方はぜひどうぞ。もちろん、ドコモユーザー以外も登録できますよ!
Amazonプライム会員になっていない方はこちらで以下から登録できます。
電電公社が38年も前に作ったINS推しテレビアニメを2022年の今、NTTドコモのネット配信サービスで見るって、なかなか感慨深くもあります。
そして、冒頭でも触れたとおり、このアニメは当時の電電公社の通信回線普及のための広報戦略であったことから、もうひとつ見逃せないものがあります。
それは自宅でのテレワークが推奨されている昨今、このアニメではシリーズ全体を通して、1985年の時点でその未来を予感させる場面が随所に描かれているところ。
85年開催の「科学万博―つくば’85」ともタイアップしており、そのなかで「もし森鴎外の時代にINSとパソコンがあったなら」という仮定で、それらを利用してテレワークに勤しむ森鴎外の姿が描かれているところなどは興味深いでしょう。
さらにはパソコンとINS回線を使い、テレワークどころか『リモート新年会』までアニメの中で描かれるのです。
そう、とくに89話は必見です。大雪のため外出できず”ステイホーム”になったサトルくんのパパ。予定されていた会社の新年会が急遽”INS新年会”になります。今で言う”リモート新年会”です。カメラ搭載のパソコンの画面はZoomのようなビデオチャット・アプリにより4分割され、4人の同僚たちと顔を合わせるパパですが、その表情は楽しくなさそう。上司や同僚に囃し立てられ披露した隠し芸の手品の”ネタ”は、あきらかにリモート新年会向きではありませんでした。INS回線を介した新年会で上司に隠し芸を披露する未来のサラリーマンの悲哀を予感させるこのアニメのエピソードは、1984年12月23日に放映されました。
2020年7月にはテレビ朝日系のアニメ『クレヨンしんちゃん』の「父ちゃんがテレワークだゾ」というエピソードにて、しんちゃんのパパ・野原ひろしの在宅勤務とテレビ会議の様子が描かれ、タイムリーだとしてネットが騒然としたそうです。ひろしは「今の時代、インターネットがあれば、何処にいても会社とつながれる」としんのすけに説明しますが、帰宅後まで会社の同僚とリモート新年会でつながり、その席で上司に隠し芸披露というサラリーマンの悲哀というインパクトを描いたミームもイチオシです。
「でも、そんな生活を続けていると不精になるかも?」と、現代人に対して、警告をも発している本作。テレワークをされている方々、ドキッとしませんか?
今だからこそ、おうちで子どもと一緒に見たい科学教養アニメです。
なお、本作の監修はあの「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と呼ばれる糸川英夫氏です。
というわけで、これまで日本のテレビアニメの中でアマチュア無線を詳しく描いた作品では『ちびまる子ちゃん』と『ミームいろいろ夢の旅』、映画では「崖の上のポニョ」とありますが、最近の萌えアニメを知らない筆者にとっては、アマチュア無線の大御所サイトさんがその存在になぜか一切触れない本作『ミームいろいろ夢の旅』がイチオシです。