HFの航空無線『洋上管制』の受信方法を解説

洋上管制について解説いたします。

洋上管制とは?

「洋上管制」とは、地上の管制エリア外の広大な海洋上を飛ぶ航空機と地上の航空局通信官がHF帯で交信する航空管制です。

通常、内陸を飛ぶ航空機と地上の航空管制はVHF帯の118-137MHz。しかし、洋上ではVHF帯の電波が届かないため、遠距離通信に適したHF帯(短波)を使用します。

HFの特性についての解説は以下の記事をお読みください。

受信機を5.628kHz(USBモード)にセットすると、フェージングのノイズ混じりに『ピー、ボーッ・・・・・』というブザーのような音に続く「ゼロ、セブン・・・・・・トウキョウ、ラジャー・・・・・・』という声が。これが洋上管制です。

洋上管制にはいくつかの特徴と特殊な運用があり、以下にその詳細を説明します。

洋上管制の特徴

  1. 長距離通信:
    • 地上の管制区域と異なり、洋上ではVHFがアウト。主にHF通信や衛星通信が使用されます。
    • HF通信の安定性は時間帯と天候、太陽活動に左右されます。したがって周波数が随時変更されます。
    • 衛星通信(SATCOM)は、より安定した通信手段として使用されますが、設備のコストが高いことがネックです。
    • 医療緊急事態、機材の不具合、燃料不足など緊急時にも使用されます。
  2. 位置報告と指示など:
    • 洋上管制では飛行中の航空機に対して気象情報、航路情報などが送信されます。
    • 航空機からは機体の位置、次の報告ポイントまでの予想到達時間、現在の速度と高度などポジションレポートが送信されます。
    • 洋上ではレーダー監視が困難なため、航空機は定期的に自分の位置を特定の位置通過時や一定時間ごとに報告します。
    • 洋上空域でも主要な航路や天候状況によっては交通が集中することがあるため、管制官は適切で安全な間隔を保つように飛行経路を指示します。
  3. 飛行情報区(FIR):
    • 洋上の空域は国際的に定められた飛行情報区(FIR: Flight Information Region)に分かれており、それぞれのFIRは各国の航空当局が管理しています。
    • 各FIRの境界を越える際には、適切なタイミングで次のFIRの担当機関に通信を引き継ぎます。
  4. 自動依存監視放送(ADS-C)とコントローラー-パイロットデータリンク通信(CPDLC):
    • ADS-C(Automatic Dependent Surveillance-Contract): 航空機が自動的に位置情報や飛行計画の更新情報を管制機関にリアルタイムで送信するシステムです。
    • CPDLC(Controller-Pilot Data Link Communications): テキストベースの通信手段です。効率的な指示や報告が可能です。

洋上管制では何が交信されるのか?

航空機側から送信される情報は自機の位置、乱気流などの気象情報、気象変化等によるコース変更要請などです。

一方、地上の管制当局側からはコースや高度の指示、他機との間隔保持の指示、飛行中の航空機から提供された気象情報の他機への伝達などです。

時には急患発生など機内で発生した緊急事態における非常要請も。

突然起きるトラブルに関する通信が行われるのはVHFの管制や航空会社ごとのカンパニーラジオ同様であり、ときに注意深く聴取したいもの。

洋上管制の受信方法

それでは実際に聞いてみましょう。

実は洋上管制の受信には機材選びにコツがあります。残念ながらIC-R6では受信できません。

以下の記事でその理由を解説しています。

洋上管制の受信には以下の記事でレビューしたSSB対応ラジオがおすすめです。

先にご紹介したSSB対応の受信機があれば、試しに夜間、比較的通信状況が連日良好な5,628kHzや4,666kHzなどの低い周波数にUSBモードでセットして受信してみてください。

おそらく、すぐには何も聞こえないと思います。また「ザーッ」というノイズが強いこともあるでしょう。

それでも「ピー、ポー」というセルコールのブザー音が聞こえてきたら、間違い無く洋上管制の通信が行われています。

それに続いて、地上の通信官や機上のパイロットの声が聞こえてくるでしょう。

洋上管制の代表的な周波数

昼間は17,904kHzのような高い周波数、夜間は5,628kHzのような低い周波数が通信良好になります。

区分け 地区 周波数(kHz) 周波数(kHz)
北太平洋地区(NP) NP1 2932 13273
5628 17946
10048 21925
NP2 2932 11330
6655 17946
8951 21925
NP3 5667 17946
8915 21925
中西部太平洋地区(CWP) CWP1 3455 13300
6532 17904
8903
CWP2 2998 11384
4666 13300
8903 17904

すべてUSBモードです。

洋上管制では昼夜とコンディションで周波数が変わる

アマチュア無線のHF帯がそうであるように、季節や時間帯によってコンディションは刻々と変化。

日本が担任するのは大きく分けると、北太平洋エリア(NP)と中西部太平洋エリア(CWP)ですが、洋上管制に使用されるチャンネルは複数あり『東京レディオ』の北太平洋エリア(NP)では2,932kHz, 5,628kHz, 6,655kHz, 8,951kHz, 10,048kHz, 11,330kHz, 13,273kHz, 17,904kHzといった周波数が、コンディションや時間帯に応じて使用されます。

洋上管制が聞こえない場合は参考にしてください。

洋上管制で『セルコール(SELCAL)』が使用される理由とは

洋上管制では航空機を個別に呼び出すために使用する呼び出しブザー『セルコール』が特徴。

その音色は洋上管制のアイコン的”BGM”と言えます。

HFではフェージングによる雑音が常時発生し、常に聴取していると疲労が大きいもの。

必要な時のみ”呼び出しベル”を鳴らして個別の機体を呼び出す仕組みなのです。

通常、航空機には個別に4桁のアルファベット(例・ABCD)によるナンバーが発行され、このナンバーが含まれたトーン信号が個別呼び出しを可能としています。

洋上管制を担う航空局職員は?

通常のVHF航空管制は航空管制官が担いますが、洋上管制は航空管制通信官の役目。管制官からの指示を通信官が航空機へ伝えます。

この洋上管制も通信官次第では突然外国便のパイロットから『お疲れシャマ』『オヤスミナシャイ』とねぎらいの言葉や挨拶をかけられた際には、通信官もそれに返すなど、人間味溢れる交信を聞くことができます。

洋上管制の飛行情報区(FIR)とは

空の区分け

安全で効率的な航空運航を維持するために、通信技術、管制手順、国際協力が不可欠です。

海の上の空は国ごとに管理する範囲が決まっています。この範囲を「飛行情報区(FIR)」と言います。

飛行機がこの範囲を超えるときは、新しい範囲の管制官と連絡を取ります。

航空機のリアルタイムな飛行ルートを24時間、無料で閲覧できる「フライトレーダー24」がおすすめです。

洋上管制のまとめ

このように洋上管制はHF帯かつSSBモードの通信が特色です。

したがって、当サイトで推奨しているIC-R6ではなく、SSB対応短波ラジオをご用意ください。

【超人気】XHDATA D-808でHF帯SSBの洋上管制や7MHzアマチュアバンドを受信する方法

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